消毒剤で看護師のCOPDリスク上昇か
以下は、記事の抜粋です。
院内感染を防ぐために使われる消毒剤などが原因で、看護師の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症リスクが高まっているとする研究結果を、フランス国立保健医学研究所のOrianne Dumas氏らが発表した。医療機器や病院内の環境表面の消毒に使われる洗浄剤や消毒剤は、看護師のCOPDリスクの上昇と関連している可能性が示されたという。
1989年にNurses’ Health Study IIに参加した米国14州の女性看護師7万3,262人に着目。隔年で実施した質問票調査データを用いて、2009年から2015年までの職場における消毒剤や洗浄剤への曝露とCOPDリスクとの関連について調べた。
その結果、消毒剤や洗浄剤に含まれる複数の化学物質に曝露すると、COPDリスクが25~36%有意に高まることが分かった。これらの化学物質には、医療機器の消毒に使用されるグルタルアルデヒドと過酸化水素のほか、病院の床や家具などの表面の消毒に用いられる消毒剤から気化した漂白剤やアルコール、第四級アンモニウム化合物が含まれた。
また、COPDリスクは、院内の環境表面を清潔に保つためだけに消毒剤を毎週使用する女性では38%高く、医療機器の洗浄に消毒剤を毎週使う女性では31%高かった。
元論文のタイトルは、”Association of Occupational Exposure to Disinfectants With Incidence of Chronic Obstructive Pulmonary Disease Among US Female Nurses”です(論文をみる)。
グルタルアルデヒドは強力なタンパク質架橋剤で、我々は電子顕微鏡標本を作る時の組織固定に良く用いていました。こんなガスを常時吸っていたら肺が固定され、COPDになるのは当然だと思います。過酸化水素も組織を障害する活性酸素を産生する化学物質で、産生された活性酸素は最近だけではなく、ヒトの組織にも有害です。これも常時吸っていたらCOPDになって当然です。
記事に書かれている「職場におけるこうした化学物質への曝露によって、看護師の健康が脅かされている可能性が示された」や「患者を感染症から守るには医療機器を清潔に保つ必要があるが、同時に医療従事者の健康も守られる必要がある」はその通りだと思います。
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