AIによる乳がん検診は発見率が20%上昇し放射線科医の仕事量を44%削減することにもつながる
以下は、記事の抜粋です。
乳がんスクリーニングに人工知能(AI)を用いることで、乳がんの発見率が20%上昇し、さらに放射線科医の仕事量を約半分も減らすことができるという論文が発表されました。
統計データによると、乳がんは肺がんを抜いて「世界で最も罹患者の多いがん」となっています。毎年230万人以上の女性が乳がんを発症しているとのこと。
今回の8万人以上の女性を対象とした大規模なランダム化比較試験では、平均年齢54歳のスウェーデン人女性のみを対象として、AIを用いた乳がんスクリーニングと、放射線科医による乳がんスクリーニングを直接比較しています。実験ではマンモグラフィで撮影されたX線写真の半分を放射線科医に二重読影(ダブルチェック)させ、もう半分をAIと放射線科医(1人)に読影させました。
AIを用いた乳がんスクリーニングでは、244人(28%)が乳がんであると診断されたのに対して、人間の放射線科医のみでの標準的な乳がんスクリーニングでは、203人(25%)が乳がんであると診断されています。つまり、AIによる乳がんスクリーニングの方が41件多く乳がんを検出することに成功したわけです。AIを用いた乳がんスクリーニングで発見した41件の乳がんのうち、19件が浸潤性がんで、22件が上皮内がんでした。なお、AI乳がんスクリーニングが乳がんを誤検知することはなかったそうです。
さらに、人間の放射線科医による乳がんスクリーニングと比較して、AIによる乳がんスクリーニングは画面読み取り回数が3万6886回も少なることが明らかになっています。この結果、AI乳がんスクリーニングを実施することで、放射線科医は画面読み取り作業の負荷を44%も減少させることができることが明らかになりました。
なお、AIを用いた乳がんスクリーニングがインターバルキャンサー(検診と次の検診の間で発見されるがん)の数を減らすことができるのかや、検診にAIを使用することが正当化されるかどうかが明らかになるまでは、まだ数年以上の時間がかかるとみられています。
研究チームは「現時点での乳がんスクリーニングにAIを用いる上での最大の可能性は、放射線科医の過剰な読影による負担を軽減することができるという点です。我々のAI支援スクリーニングシステムは、検出を担当する放射線科医が少なくとも1人必要ですが、これにより大部分のマンモグラフィの二重読影が必要なくなる可能性があります。放射線科医の作業負荷が大幅に軽減され、より高度な診断に集中できるようになります」」と述べています。
元論文のタイトルは、”Artificial intelligence-supported screen reading versus standard double reading in the Mammography Screening with Artificial Intelligence trial (MASAI): a clinical safety analysis of a randomised, controlled, non-inferiority, single-blinded, screening accuracy study(MASAI(Mammography Screening with Artificial Intelligence)試験における人工知能による画面読影と標準的な二重読影の比較:無作為化、対照、非劣性、単盲検、スクリーニング精度試験の臨床安全性解析)”です(論文をみる)。
一昨日は胸部X線写真の話でした。画像解析はAIの得意分野のようです。病理診断にもきっと導入されると思います。放射線科医や病理医の負担だけでなく、職も減らさないことを願います。
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