HDLコレステロールは単純な「善玉」ではなさそうです

善玉コレステロールが一部の人には逆効果に?
以下は、記事の抜粋です。


「善玉」コレステロールが、一部の人にとっては心臓疾患リスクを高める可能性があるとの研究結果が発表された。善玉のHDLコレステロール値を上げる医薬品に新たな疑問を投げかける報告だ。

HDLコレステロールは通常、動脈の血流を妨げる悪玉のLDLコレステロールの作用を抑え、心臓疾患のリスクを下げるとされている。しかし研究によると、まれな遺伝子変異によってHDL値が高い一部の人は、逆に心臓疾患のリスクも高まるという。

また、この遺伝子変異は、アシュケナージ系ユダヤ人に特有の現象とみられる。これまでに行われてきたHDL値を上げる薬の臨床試験では、期待通りの結果が得られておらず、今回の研究はその説明となる可能性がある。


元論文のタイトルは、”Rare variant in scavenger receptor BI raises HDL cholesterol and increases risk of coronary heart disease”です(論文をみる)。

この記事にも書かれているように、これまでは「善玉コレステロール」とよばれるHDL値が高いと心血管リスクが低いと考えられていましたが、HDL値を増やすような薬物を投与しても心血管リスクを下げることができませんでした。また、HDLを分解する受容体であるBIスカベンジャー受容体のノックアウトマウスでは、血清HDL値が非常に高いけれども動脈硬化が増えることもわかっていました。

研究グループは、アシュケナージ系ユダヤ人にBIスカベンジャー受容体の変異と高い血清HDL値を持つ家系を発見し、解析したところ、冠動脈疾患のリスが健常人の1.79倍だったと報告しています。LDL受容体の変異を持つ患者が持つリスクよりははるかに低いですが、それでもかなり高いです。メカニズムは良くわかりませんが、HDLが単純な「善玉」ではなかったということだけは間違いないようです。

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