パーキンソン病予防にマラリア治療薬が有効か
以下は、記事の抜粋です。
ある病気の治療を目的に開発された薬が、よく調べてみるとまったく予期しない別の病気に効果がある、という事例はかなり多い。表題の記事では、マラリア治療薬がパーキンソン病の予防に効くかもしれない、という研究を紹介している。
パーキンソン病のような神経変性疾患の原因は様々だが、この研究では、ある二つのマラリア治療薬が、脳内の神経伝達物質であるドーパミンを作り出す神経細胞を保護する作用を持つことを発見したらしい。二つの薬とはクロロキン(Chloroquine)と アモジアキン(Armodiaquine)で、シンガポールの南洋理工大学とハーバード大学医学部などの研究者らの成果だ。
クロロキンは従来からリウマチにも効くことで知られていたが、樹状細胞や神経ニューロンのような組織を保護するのかもしれない。
元論文のタイトルは、”Nuclear receptor Nurr1 agonists enhance its dual functions and improve behavioral deficits in an animal model of Parkinson’s disease”です(論文をみる)。
パーキンソン病は、中脳の黒質という部分にあるドーパミンを含む神経細胞の変性が原因でおこる神経疾患です。65歳以上の1~2%に発生する最も頻度の高い運動疾患(movement disorder)だそうです。現在行われているパーキンソン病の薬物治療は、対症的で副作用も多く、長期間続けているとその効力が落ちるものがほとんどです。
研究者らは、Nurr1という転写因子がドーパミン神経細胞のミトコンドリア発現を介して、炎症による細胞死を防いでいることに注目し、Nurr1に作用する薬物を既存の薬物の中から探しました。
その結果、アモジアキン(Armodiaquine)とクロロキン(Chloroquine)がNurr1を活性化する薬物として同定され、これらはラットのパーキンソン病モデルで効果を示したということです。ヒトのパーキンソン病でも有効であれば、素晴らしい発見だと思います。
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