胃酸分泌抑制が骨折リスクを高める可能性

人気の制酸剤が骨折リスクを高めるメカニズム
以下は、記事の抜粋です。


推定1億以上の米国人に使われている胸やけの薬が骨折リスクを高めるメカニズムを明らかにした、という米国フォーサイス研究所からの報告。

研究チームによれば、胃酸は消化管においてカルシウムの吸収を促進して骨格系へ届ける重要な役割をもっているという。プロトンポンプ阻害剤である制酸剤は、胃の酸度を低下させて不快な症状を緩和するが同時に腸管から必要なカルシウムの吸収も阻害してしまうという。

プロトンポンプ阻害剤と骨折の関係は以前から良く知られていた。FDA(米国食品医薬品局)は2010年に全てのプロトンポンプ阻害剤に警告ラベルを表示することを義務付けた。別の研究では、これらの薬物が重要な栄養素の吸収を阻害することも報告されている。しかし、今までその詳しいメカニズムについては不明の部分が多かった。


元論文のタイトルは、”Osteopetrorickets due to Snx10 Deficiency in Mice Results from Both Failed Osteoclast Activity and Loss of Gastric Acid-Dependent Calcium Absorption”です(論文をみる)。

論文は、Snx10(sorting nexin 10)という悪性大理石骨病患者の約4%で異常が認められる遺伝子のマウスモデルでの研究です。具体的には、いろいろなSnx10の発現レベルのマウスを作成してその表現型を調べています。結論としては、Snx10の発現レベルが下がると大理石病やクル病のような表現型が認められ、その原因はカルシウムの吸収不全であるということです。

ということで、この研究はあくまでSnx10ノックアウトマウスについての研究で、プロトンポンプ阻害剤を用いた臨床研究ではありません。しかし、胃が酸性であることが腸でカルシウムが吸収されるために必要であることを示した重要な論文だと思います。メタ解析などの臨床研究での確認を期待します。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)だけでなく、ファモチジン(ガスター)などのH2阻害薬でも胃酸分泌が抑制されるので、特に中高年の女性の場合、これらの薬物を投与する際には骨粗しょう症による骨折リスクに注意する必要があると思います。

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