日本人教授がNYタイムズで糾弾した、菅政権とメディアの癒着。何が書かれていたか。読者の反応は。
以下は、上の今井佐緒里氏の記事に紹介されている上智大学の中野晃一教授のニューヨークタイムズへの投稿記事(2021年3月25日)です。タイトルは、”The Olympics Are On! But Why? The Japanese government is dead-set on holding the Games despite the pandemic.(オリンピックは開催させる。でもなぜ?〜日本政府はパンデミックにも関わらず、大会開催に断固として固執している。)”です(記事をみる)。長いですが、開催の理由が良くわかるので是非お読みください
中野晃一・政治学者
東京発ーー1936年以来、オリンピックの開始を告げる聖火リレーは、コロナウイルスの大流行により、1年遅れで木曜日に福島からスタートした。
菅義偉首相は、「人類が新型コロナウイルスに勝利した証として」、今年の夏に大会を開催すると、日曜日に述べた。日本はおろか、人類がすぐにコロナウイルスに勝利する気配はないにもかかわらず、である。
日本は、アメリカや多くの欧州諸国に比べて良好な状況にあり、約1億2500万人の人口に対して、約45万人の感染者と約8900人の死者を出している。しかし、感染率は徐々に上昇しており、ワクチンの普及も痛々しいほど進んでいないのが現状だ。
3月21日現在、ブルームバーグによると、日本は経済協力開発機構(OECD)に加盟している37カ国の中で、一人当たりの接種数が最下位である。人口のわずか0.3%しか接種していない。オリンピックが始まることになっている7月下旬までに、日本人が十分な数のワクチン接種を受けられる可能性は、事実上ない。
参考記事(高橋浩祐):日本のワクチン接種率は世界で129位 OECD加盟国で最下位(2021年5月10日。※接種率はやや上がったものの、相変わらず最下位)
先週、日本は海外からの観客を禁止すると発表した。この決定は、世論への部分的な譲歩だったようだ。今月初めに行われたある調査では、77%の回答者が外国からのファンの観戦に反対だった。また、別の世論調査では、大会を予定通り実施すべきだと答えた人はたったの9%、中止すべきだと答えた人は32%だった。
それでは、なぜ日本は、パンデミックが公衆衛生上の大きな懸念であるのに、人々の反対を押し切ってオリンピックを開催しようとしているのか。その答えは、よく知られている。「エリート間の癒着(共謀)」である。
政権党である自民党の総裁としての菅氏の任期は9月に終わり、10月下旬までには衆議院選挙を行われなければならない。彼は、下落する人気を改善させるために、大会がもたらす心地よい効果であるメディアの大キャンペーンを頼みにしているようである。彼は昨年、安倍晋三前首相から、数々のスキャンダルに彩られた首相の座を引き継いだが、さらにいくつかの自分のスキャンダルを追加した。
菅氏は、メディアをしっかりと把握しているおかげもあり、安倍氏の執行長官だった。 彼は、第1次安倍政権(2006-07年)では総務大臣、第2次安倍政権(2012-20年)では内閣官房長官を歴任した。第2次の任期中に、国境なき記者団の世界の報道自由度ランキングで、日本のランキングは22位から66位に低下した。
参考記事(日本経済新聞):報道の自由度、日本は67位 国境なき記者団(2021年4月20日。※さらに順位を下げている)
菅氏は、自民党、総務省、メディア業界という、日本政治の鉄の三角形の中で、支配的な人物である。そして、このネットワークの見解は、海外からの観客がいてもいなくても、何としてもオリンピックを実施しなければならないというものだ。
電通を例にとってみる。日本最大の広告・PR会社であり、2020年東京大会の専属マーケティング代理店である。電通の代表取締役副社長には、元総務省事務次官の桜井俊氏が就任している。省庁の要職から、その省庁が規制する企業に、定年後に役職に就くことを、「天下り」という。天から降りてくるという意味である。
電通は自民党と密接な関係にある。日本共産党が自民党の政党助成金を分析したところ、自民党は2000年から2018年の間に、電通に100億円超を支払っていた。
参考記事(しんぶん赤旗):自民、電通へ100億円超。19年間 政党助成金から支出
見返りとして、電通は、同党の選挙キャンペーンに惜しみない献金をしている。同社はまた、政府による2兆円規模のコロナ救済策である持続化給付金を管理するという、不透明な契約をめぐるスキャンダルにも巻き込まれている。
参考記事(ロイター):焦点:「コロナ給付金」見えない下請け実態 電通関与になお不透明感
電通の日本のオリンピックへの関わりは深く、深刻な問題だ。フランスの検察当局は、東京招致委員会が国際オリンピック委員会のメンバーを買収するために、電通の元幹部に800万ドル以上(8−9億円)を支払ったとしている。電通は国際オリンピック委員会のマーケティング・パートナーでもあり、利益相反に関する同委員会の規則に違反している可能性がある。
参考記事(ロイター):東京五輪招致で組織委理事に約9億円 汚職疑惑の人物にロビー活動も
東京2020大会は、電通のおかげで、日本企業から約4000億円(31億ドル)もの資金が集められ、大会史上最も大量にスポンサーがついた大会となる。
参考記事(ダイヤモンド・オンライン):五輪スポンサー料220億円追加支払いに企業側が応じた複雑な事情
国内スポンサーの中には、日本の全国紙5社が含まれている。朝日、読売、毎日、日経、産経だ。これらの新聞社は、直接あるいは子会社を通じて、独自の提携放送局を持っている。これらの放送局は総務省の監督下にあり、ゴールデンタイムの広告枠の販売は電通に依存している。
パンデミックの影響で、東京オリンピックの開催も危ぶまれている。選手や著名人は感染症の懸念から聖火リレーを中止し、一部の代表チームは競技から撤退する可能性もある。しかし、もしオリンピックが開催されれば、それは日本の政治家とメディアのエリートたちの凝り固まった結託の成果であり、次の選挙に向けて世論を変えようとする彼らの努力の勝利でもある。
パンデミックは、まだまだ東京オリンピックを狂わせるかもしれない。選手や有名人も同様に、感染の懸念から聖火リレーを辞退し、一部の代表チームは完全に競技から撤退する可能性がある。 しかし、もしオリンピックが開催されれば、それは日本の政治エリートとメディアエリートの間の結託した共謀の功績であり、次の選挙に間に合うように世論を変えようとする彼らの努力の勝利となるだろう。
今井氏が書いているように、報告されている事実に基づいて「淡々と切りまくっている」文です。オリンピックが開催される理由だけではなく、支持率の低い政府が長続きする理由が良くわかります。
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