Rational design of small-molecule inhibitors of the LEDGF/p75-integrase interaction and HIV replication
以下は、論文要約の抜粋です。
Lens epithelium-derived grouth factor (レンズ上皮由来増殖因子、LEDGF/p75) は、HIVプレインテグレーション複合体を宿主染色体に結合させる役割を果し、ウイルスの染色体へのインテグレーションに不可欠な補因子である。
LEDGF/p75とHIVインテグラーゼの相互作用は、HIV複製の初期段階において重要で、抗ウイルス薬開発の魅力的な分子標的である。
我々は、インテグレーションをマイクロモル以下の濃度で阻害し、LEDGF/p75-インテグラーゼ相互作用とHIV-1複製を抑制する強力な阻害薬として、複数の2-(quinolin-3-yl)acetic acid 誘導体 (LEDGINs)を理論的にデザインした。
1.84-Å分解能での結晶構造解析によって、阻害薬がインテグラーゼのLEDGF/p75結合ポケットに結合することが確認された。2つの臨床的に使われているインテグラーゼ阻害薬とクロス耐性がないこととあわせると、これらの結果は、2-(quinolin-3-yl)acetic acid 誘導体がHIV-1インテグラーゼの最初に発見された本物のアロステリック阻害薬であることを示している。
我々の結果は、ウイルスタンパク質とホスト細胞因子のタンパク-タンパク相互作用を阻害する低分子を理論的にデザインすることが可能であることを証明した。
HIVは、そのウイルスゲノムを宿主の染色体へインテグレーションさせることで、治療で抑制はされるが根絶はされない恒久的生存系を確立します。これが難治性の大きな理由の一つです。
細胞の転写コアクティベーターであるレンズ(水晶体)上皮由来成長因子(LEDGF/p75)がHIVゲノムインテグレーションに不可欠な補因子です。LEDGF/p75は、インテグラーゼとクロマチンの間に入って、分子ロープとして2つを結合すると考えられています(下図を参照)。
本論文では、ウイルス酵素との相互作用を阻害する薬物は、ヒトに対する毒性は低いだろうと書かれています。本当にそのとおりであれば、素晴らしいと思います。
さらに、構造解析情報を用いて、上記相互作用を阻害する低分子量化合物を、200,000種の市販化合物から25の化合物まで絞りこんだことを”Rational design”として強調しています。このようなアプローチの結果を蓄積することが、将来の新薬開発にとって重要だと思います。
LEDGF/p75がHIV-1インテグラーゼを染色体につなぎとめている様子
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