熱中症防止に効果があるという漢方の錠剤?

足つりかけた星稜・奥川に敵主将が熱中症防止の錠剤
高校野球の夏の大会で「敵に塩を送った美談」として報道された記事です。「熱中症防止の錠剤」とは何かが気になったので、以下にその部分を抜粋します。


延長に入ると奥川の体に異変が起きた。11回、右足が2度つりかけた。「絶対に投げ切ろうと思った」と給水し、再びマウンドへ。得点は許さなかったが、体力の限界が近づいていた。

「何度もあきらめそうになった」。意外な男に背中を押された。11回裏。先頭で打席に向かう前に、4番内山から熱中症防止に効果があるという漢方の錠剤を渡された。攻守交代時、智弁和歌山の黒川主将から「奥川に」と託されていた。「元気になった。ありがたかった。でもこれが智弁の強さかとも感じた」。ライバルの心意気、友情…エンジン再点火には十分だった。昨今の球数制限の議論など超えた次元でのぶつかり合いがあった。


上の記事で書かれた「熱中症防止に効果があるという漢方の錠剤」が何かを知りたかったのでネットをサーチしてみました。その結果、「五苓散」と「清暑益気湯」の2つが候補として上がってきました。ツムラの説明は以下の通りです。


五苓散(ゴレイサン)
口の渇きや尿量の減少がある人の「水滞(すいたい)」を改善
むくみをはじめ、頭痛、めまい、下痢などは、漢方では「気血水」の「水」が滞った「水滞」を原因とする症状と考えます。水分代謝がうまくいかずに、体のあちこちに偏在(へんざい)して異常が現れるのです。「五苓散」は、「水滞」を改善する代表的な処方で、口の渇きや尿量の減少やめまいなどのある方のむくみ、頭痛、下痢などに使用されます。

頭痛、めまいから吐き気、嘔吐(おうと)まで適応が広い
「五苓散」の適応症は多く、また「虚実」の「証」も「虚実間証」を中心に比較的広く用いられます。さまざまな浮腫、急性胃腸炎、下痢、頭痛、暑気あたり、二日酔いなどの吐き気やむかつきにも用いられます。子どもの下痢、妊婦のむくみなどに使われることもあります。

配合生薬
沢瀉(タクシャ)、猪苓(チョレイ)、蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、桂皮(ケイヒ)

清暑益気湯(セイショエッキトウ)
夏バテ、暑気あたりの漢方薬として知られる
「清暑益気湯」の“清暑”とは暑さの原因を涼しくする、“益気”とは「気」※を増やすといった意味があります。暑さで弱った胃腸を元気にし、低下した体力を回復させるのがこの薬で、いわゆる夏バテ、暑気あたりに用いられる代表的な漢方薬です。

暑さによる食欲不振、下痢、全身倦怠感、夏やせなどに適しています。熱感、口の渇き、軟便、尿量の減少なども処方の目安になります。

さまざまな方向から、暑さで弱った体の回復を助ける
「清暑益気湯」は、生命エネルギーである「気」の量が不足した「気虚」に用いられる薬です。胃腸の働きを増して疲労を取る生薬、体の熱を冷ます生薬、「水」を調節する生薬などで構成されています。「人参」と「黄耆」を含む「参耆(ジンギ)剤」のひとつで、暑さで弱った体の回復を助けます。

配合生薬
蒼朮(ソウジュツ)人参(ニンジン)、 麦門冬(バクモンドウ)、 黄耆(オウギ)、陳皮(チンピ)、当帰(トウキ)、 黄柏(オウバク)、甘草(カンゾウ)、 五味子(ゴミシ)


上の説明をみると、熱中症に対しては清暑益気湯の方が効果がありそうですが、錠剤はなさそうです。本当に五苓散の錠剤に熱中症の予防効果があるのでしょうか?

心配なのは、このようなニュースによって五苓散あるいは他の漢方薬がはっきりとしたエビデンスもないまま、高校生の間で熱中症予防薬として使われることです。漢方薬の成分によってはドーピングの可能性もあります(高校野球にドーピングルールがあればの話)。もしも、エビデンスのハッキリとした漢方薬についてご存知の方や上のニュースで奥川投手が飲んだとされる漢方薬についてご存知の方がおられましたら、お教えください。

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