睡眠薬は睡眠中の脳の洗浄を妨げるらしい
以下は、記事の抜粋です。
アドレナリンの弟分の分子ノルアドレナリンの周期的放出と連動した血管収縮が、睡眠中の脳の老廃物を除去する脳脊髄液(CSF)流を生み出していることがマウスでの検討で示されました。
また、定番の睡眠薬ゾルピデムは都合の悪いことに、ノルアドレナリンの周期的放出を抑制して脳のCSFの流れを妨げるようです。
脳には体液を集めて移動させるリンパ管がありませんが、それに代わるグリンパティック系という仕組みを備えます。グリンパティック系は脳を浸すCSFを血管に沿った細道を伝わせることで、老廃物やその他の不要分子を洗い流します。グリンパティック系の流れは睡眠中に増えることが報告されています。
グリンパティック系の発見を2012年に報告したMaiken Nedergaard氏らは、記憶や学習などの認知機能に不可欠な睡眠段階であるノンレム睡眠のときにノルアドレナリン量の増減に応じて脳の血管が伸縮して血液量が増減し、CSFが脳に入ったり出ていったりすることが示されました。そのようにしてノルアドレナリンの変動はノンレム睡眠時にポンプのようなグリンパティック系の働きを生み出します。覚醒しているときやレム睡眠時にはノルアドレナリンと血流量はあまり関連しませんでした。
ヒトもマウスと同様に睡眠中にノルアドレナリンが周期的に放出されて血管が拍動するようであり、マウスと同様のポンプ機能がヒトの脳にもあるかもしれません。
また、ゾルピデムに限らず睡眠薬はほぼどれもノルアドレナリンの生成を抑制します。そこで、Nedergaard氏らはマウス6匹にゾルピデムを投与してその影響を調べました。その結果、ゾルピデムを投与したマウスはプラセボ投与のマウスに比べて早く眠りについたものの、脳のCSFの流れが平均して30%ほど落ちていました。CSFの流れが滞ることは脳の洗浄が不調を来すことを意味しており、ノルアドレナリンを抑制する睡眠薬は脳が不要物を排出するのを妨げるかもしれません。
ゾルピデムは、日本ではマイスリーという商品名で売られている非常に良く用いられる睡眠薬です。マウスだけでなく、ヒトでもゾルピデムが脳のクリアランスを阻害することは間違いないかもしれませんが、この阻害が認知症などの病気に関連しているかどうか、オレキシン受容体拮抗薬なども同じように脳のクリアランスを阻害するのか、などが気になりました。
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