レカネマブかドナネマブか?
以下は、記事の抜粋です。
アルツハイマー病治療における新たな選択肢
わが国でアルツハイマー病(AD)の疾患修飾薬として認可されたレカネマブとドナネマブのどっちがいい? 今日、これがAD治療の最前線の話題かもしれない。両者は、ADの原因物質とされてきたアミロイドを標的とする抗アミロイドβモノクローナル抗体である。
当面はアミロイドとタウを標的とする薬剤の効果的な使い方が臨床現場の最大課題になるだろう。歴史的にみると、アロイス・アルツハイマー博士は、若年性AD患者の死後、脳を剖検した結果、この疾患の主要な病理所見は、アミロイドを主成分とする老人斑とタウが主成分の神経原線維変化(NFT)だとした。以来、治療薬開発においてアミロイドとタウが主流にあった。なおAD脳では、老人斑が出現した後に神経原線維変化が現れる。だから理論的には、病初期にアミロイドを消滅させればNFTも生じないはずである。ところが従来の研究的治療では、アミロイドを消してもADは進行した。どうもアミロイドはこの病気の火付け役であって、ほかにも悪役達がいると考えられるようになった。だから炎症や免疫、シナプスの可塑性や神経保護等に注目する創薬へシフトしたと言うこともできる。
レカネマブとドナネマブの比較ポイント
さて本題のレカネマブかドナネマブかを論じるうえでのポイントは、まずは効果、そして最大の副作用ARIA(脳血管周囲の浮腫と出血、Amyloid-related imaging abnormalities)の発生率だろう。またいずれも医療機関で点滴投与するだけに、投与頻度は大きな問題である。さらに作用機序の異同に注目する人も多い。
効果の指標は、図のように症状の軽減率と病気進行を遅らせる期間に要約されるだろう。レカネマブでは軽減率27%、期間7.5ヵ月2)、またドナネマブでは28.9%、5.4ヵ月3)とされる。ほぼ互角といってよい。副作用ARIAは、レカネマブで脳の浮腫や滲出液貯留(ARIA-E)が12.6%、微小出血(ARIA-H)が17.3%認められた。ドナネマブではARIA-Eが24.0%、ARIA-Hは31.4%であった。これについてはレカネマブが優れているかもしれない。投与方法はいずれも点滴であり、前者は2週間に1度、後者は4週間に1度である。これについて多くの人はドナネマブを好むだろう。
アミロイドβターゲットの違い
アミロイド、とくにアミロイドβは、初めは小さなかたまり(凝集体)だが、だんだんと大きな老人斑へと成長する。かたまりの大きさに応じて、モノマーとかオリゴマーなど「プロトフィブリル」と総称される初期の段階を経て、最終的に老人斑として沈着する。レカネマブはプロトフィブリルと、より大きなアミロイド斑とに結合するとされる。一方ドナネマブは、脳に沈着後にある程度の時間が経ち「ピログルタミル化」という修飾がなされたアミロイド斑に選択的に結合する。
さて、アミロイドが神経細胞に対して持つ毒性は、老人斑にあるのではない。その比較的初期の段階に最も毒性が強いとされる。それならレカネマブのほうがより効果は強いのではないかと思える。ところが実際には、効果はまあ互角である。これに関しては、臨床の場では、まだ知られていない作用や効果の関与があるのかもしれない。
これらの薬はアミロイドβが脳に蓄積している患者にのみ有効です。健常者でも 60 歳代で 10〜15%,70 歳代で 20〜30%程 度のアミロイド PET 陽性者が存在すると言われています。また、MCI患者では約60%、AD患者では約90%だと報告されています(論文をみる)。
AIによると、アミロイドPET検査は、アルツハイマー病による軽度認知障害や軽度の認知症の進行抑制を目的とした「レカネマブ(レケンビ®点滴静注)」の投与の要否を判断する際に保険適用となります。
保険適用を受けるには、次の条件を満たす必要があります。
●厚生労働省の定めるレカネマブ(遺伝子組換え)の最適使用推進ガイドラインに沿っている施設であること
●アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度の認知症が疑われる患者であること
●脳脊髄液(CSF)検査を行っていないこと
●保険適用となる医療機関は限定されており、レカネマブの投与ができる医療機関からのご紹介(検査依頼)のみが受けられます。
●検査費用は、3割負担の方で約45,000円、1割負担の方で約15,000円です。
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