「貧困層ほど糖尿病が多い。貧困な国ほど糖尿病が多い。」は本当か?

片山さつき議員バカ丸出し「ホームレスが糖尿病になる国ですよ」
以下は、記事の抜粋です。


渋谷区により公園を締め出された野宿者たちの「越年・越冬」。2日目のきょう(30日)は、国際NGO『世界の医療団』が健康相談を行った。

野宿者たちに つきもの の疾病は高血圧と糖尿病だ。過酷な生活と偏った食事が原因である。炊き出しはオニギリやライスなど炭水化物が多い。炭水化物は体内で糖分に変わる。野菜や果物は不足しがちだ。バランスよく、あれもこれも摂っての食事は、どだい無理である。糖尿病にならざるを得ない食生活なのだ。

『世界の医療団』のある医師は「貧困層ほど糖尿病が多い。貧困な国ほど糖尿病が多い。そういうデータが出ている」と話す。

生活保護削減の旗を振る片山さつき議員は、こうした当たり前の医療知識もないようだ。「本当に困窮して3食食べられない人がどれ位いると思う? ホームレスが糖尿病になる国ですよ」-週刊誌の対談で片山議員はバカ丸出しの発言をした。(週刊朝日2012年7月20日号)

上述の医師は「そんな議員には世界のデータを見せたらいいんです」と憤る。とはいえ国民の圧倒的多数は、偏らざるを得ない野宿者の食事と糖尿病との因果関係を知らない。片山さつき議員の発言は、メディアで増幅されて一人歩きする。

野宿者でなくても貧困層の食事は炭水化物が中心になりがちだ。バランスも悪い。“ 生保受給者が糖尿病になる国ですよ ”。片山さつき議員の「バカ丸出し発言第2弾」が聞こえるようだ。


この記事を書いた田中龍作氏は、「『世界の医療団』のある医師」が「貧困層ほど糖尿病が多い。貧困な国ほど糖尿病が多い。」と話したことを「当たり前の医療知識」だとして、片山さつき議員をバカにしていますが、本当でしょうか?

糖尿病有病率 国別ランキング統計・推移をみると、サウジアラビア、クウェート、カタールなどのアラブ産油国の有病率は高く、エボラが発生しているようなアフリカの諸国は低いことがわかります。「ある医師」が話した「当たり前の医療知識」の後半部分「貧困な国ほど糖尿病が多い。」という仮説は正しくないようです。

もう一つの仮説、「貧困層ほど糖尿病が多い。」についても調べてみました。”Poverty a Leading Cause of Type 2 Diabetes, Studies Say”という”Diabetes in control”の記事をみると、アメリカでは貧困と糖尿病に関する多くの研究が行われており、年収1万5千ドル未満のヒトの2型糖尿病リスクは年収8万ドル以上のヒトの2倍以上だという報告があります(記事をみる)。この仮説は正しいようにみえます。

しかし、日本では貧困と糖尿病の関連について調べた研究はほとんどなく、「暮らし、仕事と40歳以下2型糖尿病についての研究」という民医連による報告が最初のようです(記事をみる報告をみる)。

この民医連の報告によると、日本における若年2型糖尿病患者の大規模研究は存在せず、彼らの研究が、病院や診療所に通院中の20歳から40歳までの2型糖尿病患者の調査としてこれまでで最大だそうです。彼らは、「網膜症や腎症などの合併症の発病や血糖コントロールに社会経済状況が大きな影響を及ぼしていることが示唆されることを示した点で意義があります。また、海外、特にOECD加盟国などで報告されているように、日本でもSESの低さと肥満や糖尿病の関係に同様の傾向が認められることを示した点でも重要です。」と慎重に結論しています。

日本とアメリカでは、健康保険制度や安全のコストはもちろん、教育制度や食文化なども大きく異なります。日本では「貧困層ほど糖尿病が多い。」という仮説はまだ十分に証明されていないと思います。

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