関節リウマチを疑ったらルーチンで見るべき血液検査4選
この記事は、完全に自分用のメモです。
ステップ1:とりあえずルーチンで見ておきたい血液検査
RAの診断も除外診断です。検査をしなければ分からない疾患についてはルーチンで検査をします。
◆HBs抗原、HCV抗体
まずは、B型肝炎とC型肝炎のスクリーニング検査です。肝炎の症状としての関節炎や関節痛には忘れた頃に遭遇します。特にB型肝炎は、RAであれば、いずれ詳しく追加検査することになりますから、決して無駄にはなりません。B型肝炎ウイルス(HBV)既往感染者では、免疫抑制療法によりHBVが再活性化し、致死的な重症肝炎を発症する恐れがあるからです。
このHBV 既往感染例のHBV再活性化に起因する肝炎は「de novo B型肝炎」と呼ばれ、予後が悪いため予防とモニタリングが必須です。de novo B型肝炎については、「 B型肝炎治療ガイドライン(第4版)」に対策がまとめられているのでチェックしてみてください。
◆TSH、FT4
甲状腺機能が亢進しても低下しても、関節痛が生じ得ます。関節症状以外に手掛かりがなかったり、治療介入によって甲状腺の値が変動することで関節痛が起こったりすることもありますから、TSHやFT4にも注目しましょう。
◆カルシウム
高カルシウム血症による関節痛も、血液検査で注目しないとうっかり見逃してしまうかもしれません。高カルシウム血症を契機に副甲状腺機能亢進症や悪性腫瘍、サルコイドーシスの診断につながることもあります。高カルシウム血症の症状は関節痛や倦怠感、食欲低下などで、特徴的な症状に乏しいため、血液検査でカルシウムの値をチェックするよう意識しましょう。
◆尿酸値
突然発症や、寛解と増悪を繰り返すエピソード、第1中足趾節(MTP)関節の疼痛などがあれば、痛風を疑うことは比較的容易ですが、中には多関節炎として発症する例もあります。尿酸値7mg/dLを超える状態が長く続いたり、尿酸値の急激な変動があったりすると痛風発作が起こり得ます。
ステップ2:状況に応じてチェックしておきたい血液検査
◆発熱があるとき2)
RAによって発熱を来すこともあるものの、「発熱+関節炎」ではRA以外から考えるのが鉄則です。例えば、多関節炎を起こす疾患として感染性心内膜炎があります。主な治療は抗菌薬で、RAの免疫抑制療法とは方針が“真逆”ともいえるので、感染性心内膜炎の見逃しを防ぐため、血液培養は発熱時に追加したい検査の筆頭になります。
発熱の程度にも注目しましょう。40℃以上の発熱を伴う関節炎の鑑別疾患は基本的に、成人スティル病、化膿性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)に絞ることができます。40℃以上の発熱があれば、フェリチンと抗核抗体をチェックします。
発熱と関節炎が生じた順番もポイントです。発熱が関節炎に先行する場合、鑑別疾患の候補としてはウイルス性関節炎、ライム病、反応性関節炎、成人スティル病、細菌性心内膜炎が挙げられます。
反応性関節炎には下肢に優位という特徴があります。その代表的な原因は、腸管感染症(サルモネラ、カンピロバクター、エルシニア)、泌尿器感染症(クラミジア)、咽頭炎(溶連菌)などです。股関節、膝関節、足首といった下肢の荷重関節に急性・亜急性に関節炎が生じていたら、リスクに応じて便培養検査、クラミジアの尿中PCR検査、扁桃の溶連菌迅速抗原検査、抗ストレプトキナーゼ(ASK)や抗ストレプトリジン-O(ASO)の測定などを検討します。
◆全身の関節痛があるとき
全身の関節痛を来す2大疾患は、ビタミンD欠乏症とパルボウィルスB19感染症です。食生活が偏っていたり、日光を浴びる機会が少なかったりといった情報があれば、ビタミンD欠乏症による疼痛を疑い、25-ヒドロキシビタミンDの値をチェックします。幼児と接触する機会のある家族歴または職歴があり、関節痛が出現する1~2週間前にインフルエンザ様症状や下痢、手足の浮腫、紅斑を認めるケースでは、パルボウィルスB19のIgM抗体測定を考慮します。
◆抗核抗体関連4疾患を示唆する所見があるとき
抗核抗体関連疾患の(1)SLE、(2)シェーグレン症候群、(3)多発性筋炎、皮膚筋炎、(4)全身性強皮症──の4疾患(±混合性結合組織病)を疑う身体所見(レイノー現象、間質性肺炎を示唆する捻髪音、爪周囲の血管の変化、皮膚硬化など)や検査結果(間質性肺炎を示唆する画像所見、尿蛋白や尿潜血、肺高血圧症を示唆する心臓超音波検査結果)を認めたら、HEp-2細胞を用いた間接蛍光抗体法で抗核抗体を測定しましょう3)。なお、RAにSLEや全身性強皮症を合併しているケースにもしばしば遭遇します。
ただし抗核抗体は、健常者であっても、640倍以上の陽性となる例もあります。特に女性、高齢者、抗核抗体関連疾患の家族歴があると陽性になりやすいとされています。
ステップ3:RA診断セット
◆リウマトイド因子と抗CCP抗体
リウマトイド因子(RF)と抗CCP抗体がともに陽性であれば、RAの可能性は高まります。しかし、感度が低いため、両方が陰性でもRAを否定はできません。
◆X線検査
X線検査は基本的に手と足、疼痛部位に加え、胸部で実施します。手足は痛みのある箇所だけではなく、全体を正面および斜位の2方向で撮影します。発症早期のRAでは、X線検査で骨びらんや関節裂隙の狭小化といった特徴的な所見を確認できることはまれです。一方で、骨びらんを見つけられればRAの可能性は高まります。
手関節では、近位指節間(PIP)関節や中手指節(MCP)関節の骨びらん、手根骨の狭小化の有無などを評価します。膝関節に関しては、骨棘や石灰化沈着が目立たず、関節裂隙における内側と外側が均等に狭小化する像があればRAが示唆されます。
胸部X線検査では、RAに伴う間質性肺炎の有無をチェックします。さらに、見逃してはいけない細菌性疾患や結核性肺炎、悪性腫瘍などのスクリーニングにも役立ちます。
◆関節超音波検査
関節超音波検査は低侵襲で、簡便に実施できる便利なツールです。骨びらんや滑膜の増生などを検出でき、RAらしさを確かめられます。
Gem of Advice
残念ながら、RAと一発診断できる検査はない。RAらしさを高める検査だけでなく、RA以外の鑑別疾患を除外するための検査も実施しよう。
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