アトピー性皮膚炎の最新治療について

中等症~重症アトピー性皮膚炎、ネモリズマブ追加で治療成功率が向上
以下は、記事の抜粋です。


そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎を有する成人および青少年の治療において、基礎治療(局所コルチコステロイド[TCS]±局所カルシニューリン阻害薬[TCI])単独と比較して、基礎治療+ネモリズマブ(インターロイキン-31受容体サブユニットα拮抗薬)は、治療成功および皮膚症状改善の達成率の向上をもたらし、安全性プロファイルは両群でほぼ同様であることが、ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らが実施した2つの臨床試験(ARCADIA 1試験、ARCADIA 2試験)で示された。

2つの試験とも、年齢12歳以上、そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎で、TCS±TCIによる治療で効果が不十分であった患者を対象とした。

被験者を、基礎治療(TCS±TCI)との併用で、ネモリズマブ30mg(ベースラインの負荷用量60mg)を4週に1回皮下投与する群、またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。

主要エンドポイントは2つで、16週目の時点での治療成功(皮膚病変消失または同ほぼ消失で、かつベースラインから2段階以上の改善)、およびEczema Area and Severity Index(EASI)のベースラインから75%以上の改善とした。

9つの主な副次エンドポイントもすべて有意に改善
2つの試験に合計1,728例を登録した。ネモリズマブ群に1,142例、プラセボ群に586例を割り付けた。16週時の治療成功の割合はプラセボ群に比べネモリズマブ群で有意に優れた(それぞれ36% vs.25%と38% vs.26%)。また、EASI-75の達成割合も、プラセボ群に比しネモリズマブ群で有意に良好だった(44% vs.29%と42% vs.30%)。

9つの主な副次エンドポイント(そう痒、など)はいずれも、ネモリズマブ群で有意な有益性を認めた。ネモリズマブ関連の可能性がある有害事象は1%であった。


元論文のタイトルは、”Nemolizumab with concomitant topical therapy in adolescents and adults with moderate-to-severe atopic dermatitis (ARCADIA 1 and ARCADIA 2): results from two replicate, double-blind, randomised controlled phase 3 trials(中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する青年および成人患者を対象としたネモリズマブと併用外用療法(ARCADIA 1およびARCADIA 2):2つの反復二重盲検無作為化比較第3相試験の結果)です(論文をみる)。


アトピー性皮膚炎の抗体医薬は、デュピルマブ(デュピクセント®)しか知らなかったので、最新治療について調べてみました。やさしく紹介したブログがあったので以下に抜粋して紹介します。


アトピー性皮膚炎の原因は、ダニなどに対するアレルギーだけでなく、体質的に皮膚のバリア機能が低下して乾燥肌になっていることも挙げられます。アトピー性皮膚炎は特別な病気ではなく、体質的に乾燥肌の人が痒みのためにひっかいて、湿疹が特定の場所に繰り返しできる疾患です。薬による治療も大切ですが、その前に生活環境を整えることが最も大切です。
当院では、生活指導を行いながら、外用薬を主体に内服薬を補助薬として標準的な治療を行っています。外用薬はステロイド軟膏を第1選択薬として、タクロリムス軟膏(プロトピック®など)やデルゴシチニブ軟膏(コレクチム®)も使用しています。保湿剤としてはクリームタイプではなく白色ワセリンなどの油脂系の保護剤をお勧めしています。

成人型アトピー性皮膚炎
保存的治療で良い状態を維持できない重症の患者様には、医療費は高額とはなりますが、2つの新しい治療法をお勧めします。ひとつは皮下注射薬(抗体医薬)で、デュピルマブ(デュピクセント®)とネモリズマブ(ミチーガ®)トラロキヌマブ(アドトラーザ ®)、レブリキズマブ(イブグリース®)です。2つ目はJAK阻害薬の内服で、バリシチニブ(オルミエント®)ウパダシチニブ(リンヴォック®)アブロシチニブ(サイバインコ®)があります。当院としては、効果が高く、副作用も少なく、2週間に1回の自己注射も可能なデュピクセント®を第1にお勧めします院長ブログ12参照)。効果に個人差によるばらつきが少なく、長期使用により効果が持続します。乳幼児にも注射可能です(生後6か月以上)。また、類似疾患である結節性痒疹にも適応があり、効果が高いです。レブリキズマブ(イブグリース®)は2024年5月末に発売された新薬で、約1年間は長期処方できませんが、デュピクセント®と同等以上の効果があり、月1回の注射で済みます。ミチーガ®とアドトラーザ ®はお勧めしません。注射が苦手な方、かゆみを止めるための短期治療希望の方、デュピクセント®による結膜炎の副作用のある方はJAK阻害薬、特にリンヴォック®の内服をお勧めします。JAK阻害薬は発売された当初の予想より重篤な副作用が少なく、比較的安全な薬剤であることがわかってきました。また、速効性ですが、最初は効果が高くても経過中に悪化する症例を経験します。効果不十分な場合、JAK阻害薬は用量をあげることができますが、副作用も多くなる傾向があるので要注意です。JAK阻害薬を希望される場合には事前に血液検査や胸部X線検査を受けていただきます。


この記事だけでは、なぜ「ミチーガ®(ネモリズマブ)とアドトラーザ ®はお勧めしません。」なのかわかりませんが、論文も引用されていてとても参考になりました。皮膚科は、患者数が多すぎて時間がないためか、中等症~重症アトピー性皮膚炎の患者にも抗体医薬を処方しない医師もいるようです。治らない患者さんは、薬を替えるか医者を替えるかしてみましょう。

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