米国バイオテックの遺伝子編集ブタ腎臓の2例目移植が成功
以下は、記事の抜粋です。
多くのニュースで取り上げられた米国のマサチューセッツ総合病院での世界初のブタ腎臓のヒトへの移植成功からおよそ1年が過ぎ、同病院で2例目のその試みが先月1月25日に無事完了しました。
移植されたのは、バイオテクノロジー企業eGenesis社が開発している遺伝子編集ブタ腎臓です。EGEN-2784と呼ばれるそのブタ腎臓はよりヒトに順応するように、69のCRISPR-Cas9遺伝子編集を経ています。具体的には、主要な3つの糖鎖抗原が省かれており、7つのヒト遺伝子(TNFAIP3、HMOX1、CD47、CD46、CD55、THBD、EPCR)を盛んに発現し、ブタ内在性レトロウイルスが働けないように不活性化されています。
EGEN-2784はヒトへの最初の移植例となった62歳の末期腎疾患患者Rick Slayman氏の体内ですぐに機能し始め、11.8mg/dLだった血漿クレアチニン濃度が移植後6日目までに2.2mg/dLに下がりました。Slayman氏は透析が不要になるほどに回復しました。
しかし腎機能維持にもかかわらず、Slayman氏は移植から2ヵ月ほど(52日目)で呼吸困難に陥って急逝しました。持病の糖尿病や虚血性心筋症によって生じたとされる冠動脈疾患を伴う心肥大、左室線維化、後壁梗塞が剖検で見受けられました。移植腎臓の拒絶反応や血栓性微小血管症の所見は認められませんでした。どうやら重度の虚血性心筋症と関連するリズム障害で突然心臓死したようです。
66歳の男性Tim Andrews氏への2例目となるEGEN-2784移植手術が先月1月25日終了しました。2月7日のマサチューセッツ総合病院の発表によると、移植した腎臓は見込みどおり機能しており、Andrews氏は手術の1週間後の2月1日には早くも退院して透析いらずの生活を送っています。
日本での開発も進む
日本のポル・メド・テック社がeGenesis社と提携しており、昨年2月にはEGEN-2784の遺伝子編集技術を利用した移植医療用のブタを日本で生産できたことが発表しています。11月24日には、遺伝子改変ブタ腎臓のサルへの移植が実施されました。先週1月5日に同社は実用化に向けた取り組みのための資金5億1千万円を調達したことを発表しています。ポル・メド・テックの遺伝子改変ブタ生産力は今のところ1年間あたり50頭です。2年後には1年間に数百頭生産できるようにし、移植実施医療機関への円滑な臓器の供給を目指します。
腎移植にかかる金額がどのくらいになるのかが気になります。あと、1例目のSlayman氏は糖尿病で腎臓以外の血管もすべて傷んでいたことが死因の1つのようです。腎臓だけ取り換えてもダメかもしれないので、糖尿病が原因の腎障害で透析を受けているヒトはあまり期待しすぎない方が良いかもしれません。
他の記事によると、RevivicorやMakana Therapeuticsなどの会社もブタの遺伝子改変腎臓を提供しているようです。
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Revivicor 研究農場の遺伝子組み換え子豚。
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