1型糖尿病治療、インスリンいらずに?名古屋大が開発中
以下は、記事の抜粋です。
名古屋大の研究チームは12日、インスリンを使わない新たな「1型糖尿病」の治療法の開発を進めていることを明らかにした。マウスを使った実験では、血糖値の低下を確認したという。実用化すれば、インスリンの皮下注射などの負担がなくなる可能性がある。
1型糖尿病は、膵臓(すいぞう)でインスリンを分泌できなくなって起こる。国内の患者は推定10万~14万人程度とされる。インスリンを補充するための1日4~5回の注射のほか、乱高下する血糖値の管理が必要だという。
研究チームは、脂肪細胞から分泌され、食欲を抑えるホルモン「レプチン」と、レプチンの働きを邪魔するたんぱく質に着目。1型糖尿病を起こさせたマウスに対し、レプチンと、邪魔するたんぱく質の動きを抑える薬を投与すると血糖値が下がったという。
「中枢神経に作用し、血液中の糖が細胞内に取り込まれ、血糖が低下したと考えられる」と坂野僚一准教授(内分泌代謝学)は話す。今後、体内での詳しい作用の仕組みを調べる。「1型糖尿病の内科的な治療法は現在、インスリンの補充しかない。新たな手法によって患者の負担が減る可能性がある」と話す。
1日1回のレプチンの注射か鼻へのスプレー注入と、薬の投与を検討している。名大はこれらの治療法を、国内で特許申請したという。また、患者やその家族でつくる認定NPO法人日本IDDMネットワーク(佐賀市)はこの研究に対し今年度から5年間、計1千万円の研究費を助成するという。(木村俊介)
研究課題は「レプチン受容体シグナルを介した1型糖尿病の新規治療開発」。研究者は、名古屋大学の坂野准教授と伊藤助教。支援される研究資金は1,000万円です。
1型糖尿病のモデルマウスに、脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモンとレプチンの作用を増強する薬剤を組み合わせて投与するとインスリンを使用しなくても血糖値が正常化します。
この治療方法が臨床応用された場合、1型糖尿病患者は、これまでの治療で行っていた毎日4~5回のインスリン皮下注射から解放され、インスリン治療で生じる低血糖の頻度が減ると共に、体重増加のリスクが軽減されます。
1型糖尿病の発症は小児~思春期に多いと考えられていたましたが、実際には30歳以降の発症も多く、全体の半数に上ることが、英国の12万人を調べた調査で明らかになっています(記事をみる)。
1型糖尿病では膵β細胞から分泌されるインスリンの分泌が低下〜枯渇しているために、治療の基本は不足しているインスリンを補充することにある。具体的には、頻回注射療法あるいは持続皮下インスリン注入療法による強化インスリン治療を行う必要がある。これに加えて、1日の血糖値の変動を把握するために血糖自己測定(SMBG)を1日最低4回以上行う必要があります。 1日でもインスリン治療を怠ると糖尿病性ケトアシドーシスなどの代謝障害をまねき、また食事の摂取量や運動量に不相応に過量のインスリン注射を行うと重症低血糖を起こす可能性があります(記事をみる)。
このように、インスリン治療が生涯欠かせない1型糖尿病の治療・管理は容易ではありません。日本には「小児慢性特定疾患治療研究事業」があり、18歳未満で発症した1型糖尿病患者は、医療費の自己負担分が補助されます。一方で、この公的助成を受けられるのは20歳未満までで、それ以降は通常の保険診療に切り替わります。これは、「1型糖尿病の発症は小児~思春期」という昔の誤った考えに基づく制度です。私は、1型糖尿病を難病に指定し、公的助成をするべきだと考えます。
記事のような新しい治療の開発と共に、国の社会的支援制度の整備が求められています。
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