大発見!和歌山医大のグループだけで依存性の無い鎮痛化合物を開発した?

和歌山県立医大研究T・依存性無い鎮痛化合物を開発
以下は、記事の抜粋です。


和歌山県立医科大学の研究チームは、このほど、依存性の無い鎮痛化合物を開発したと発表しました。末期ガンの痛み止めなどで用いられている、モルヒネやオピオイドに代わる安全な薬剤の開発につなげたい考えです。

これは、県立医大の木口講師らの研究チームが開発した「AT-121」と呼ばれる化合物です。

木口講師らの研究チームは、オピオイド鎮痛薬が「ミューオピオイドペプチド受容体」という細胞膜上のタンパク質と結合して、痛みを伝える神経の働きを抑える一方で、作用が強く、依存性やかゆみなどの副作用を引き起こすことからヒントを得ました。

そして、同じく細胞膜上にある別のタンパク質「ノシセプチン受容体」に着目し「ミューオピオイドペプチド受容体」と「ノシセプチン受容体」の両方に結合する化合物、AT-121を合成しました。これをアカゲザルに投与したところ、モルヒネのおよそ100倍の鎮痛作用があった一方で、依存性やかゆみなどの副作用はみられなかったということです。

木口講師らは、両方の受容体への相乗効果が発揮された一方で、それぞれの受容体には弱く働いて有害作用が生じなかったとみていて「新しい仕組みを利用した、安全で依存性の無い鎮痛薬の実用化につながる。国際的にも意義は大きい」と話しています。


元論文のタイトルは、”A bifunctional nociceptin and mu opioid receptor agonist is analgesic without opioid side effects in nonhuman primates”です(論文をみる)。

ノシセプチン受容体は、オピオイド受容体と構造が良く似ているがオピオイドペプチドに感受性を示さない新たな遺伝子として発見されました。さらに、この受容体(ORL1)に結合する物質として、ノシセプチンが発見されました。このノシセプチンはオピオイドと非常に良く似たアミノ酸配列を持ちますが,オピオイドとは逆に痛覚過敏や抗オピオイド作用を示します。

この研究は、受容体の構造解析を行い、両方の受容体に作用する低分子、このAT-121が霊長類を使った実験で、依存性のない鎮痛薬であることが示されたというものです。

素晴らしい研究だと思いますが、上の記事では、和歌山医大の研究者だけでAT-121を発見し、霊長類を使った動物実験をやったように書かれていることが問題です。これは誤りです。

論文をみると、著者は10名でその中の和歌山医大に所属しているのは、第2著者の木口氏と第8著者の2名だけです。責任著者(corresponding author)は米国ノースカロライナ州のWake Forest School of MedicineとW.G. Hefner Veterans Affairs Medical Centerを兼任するMei-Chuan Ko氏です、第1著者と木口氏は”These authors contributed equally to this work.”と書かれています。これらの記載は、この仕事は和歌山医大と米国の研究者との共同研究であることを示しています。また、この研究は米国のKo氏を中心で行われたことが分かります。

こんな印象操作をして、日本人や和歌山医大が素晴らしいとか思わせたいのでしょうか?

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