東京理科大、植物由来のフェルラ酸から一段階でバニリンを生成する酵素の開発に成功
以下は、記事の抜粋です。
■研究の要旨とポイント
●ラン科のバニラ属植物から得られるバニリンは、バニラアイスクリームやシュークリームの上質な甘い香りの主成分で、香料化合物として広く使用されています。
●本研究では、植物由来のフェルラ酸から一段階でバニリンを生成する酵素の開発に成功しました。
●米ぬかや小麦ふすま等の農産廃棄物から豊富に得られるフェルラ酸を、開発した酵素と常温で混ぜるだけでバニリンを生成できるため、確立した技術は簡便かつ環境にやさしい香料化合物生産手法を提供することができます。
■研究の概要
バニラアイスクリームやシュークリームの上質な甘い香りの主成分は、バニラ属植物から得られるバニリンという化合物です。さまざまなスイーツなどに広く使用されており、世界的に需要の高い化合物ですが、植物からの抽出により得られる量は限られているため価格高騰がしばしば問題となります。
東京理科大学の古屋俊樹教授らの研究グループは、植物由来のフェルラ酸から一段階でバニリンを生成する酵素の開発に成功しました。フェルラ酸をバニリンに変換する酵素の創製を試行錯誤する中で、フェルラ酸と部分構造が類似するイソオイゲノールという化合物を変換する酵素に着目しました。この酵素タンパク質の3つのアミノ酸残基を変えるだけでフェルラ酸をバニリンに変換するようになることを発見しました。原料のフェルラ酸は米ぬか等の農産廃棄物から豊富に得られる化合物です。このフェルラ酸と開発した酵素を常温で混ぜるだけでバニリンを生成できるため、確立した技術は簡便かつ環境にやさしい香料化合物生産手法を提供することができます。現在、企業との共同研究により、開発した酵素を利用したバニリン生産の実用化を目指しています。
本研究成果は、2024年5月10日にアメリカ微生物学会発行の学術誌「Applied and Environmental Microbiology」にオンライン掲載( https://doi.org/10.1128/aem.00233-24 )されました。
元論文のタイトルは、”Engineering a coenzyme-independent dioxygenase for one-step production of vanillin from ferulic acid(フェルラ酸からのバニリン一段階生産のための補酵素非依存性ジオキシゲナーゼの遺伝学的改変)”です(論文をみる)。
以下は、理科大のプレスリリースに掲載されていた図です。開発された酵素(変異型Ado)は、酵素とフェルラ酸、空気(酸素分子)を常温で混ぜるだけで、反応液リッター当たりグラムスケールでバニリンを生産可能だそうです。バニラ好きには良いニュースかもしれません。
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