世界各国で、子宮頸がんの撲滅が現実味を帯び始めています。

子宮頸がん予防 HPVワクチン 最新状況は? ケンブリッジ大学HPV研究者・大阪大学産婦人科医に聞く
子宮頸がんワクチンについての記事は、本ブログで何度も紹介していますが、極めて重要なので今回も紹介します。


世界各国で、子宮頸がんの撲滅が現実味を帯び始めています。子宮頸がんの原因、ヒトパピローマウイルス(HPV)の研究者は、「スコットランドやノルウェーで13歳までにHPVワクチンを接種した世代の子宮頸がん発症例がゼロになった」、「HPVワクチンに子宮頸がんの予防効果があることは疑う余地がなくなった」と話します。

一方、日本では2013年からHPVワクチンの接種率が著しく低下。国内外の専門家は今後、救えるはずの命が救えない事態が起きるのではないかと、危機感を募らせています。

HPVは400種類以上発見されていますが、そのうちがんの原因になるハイリスクのウイルスの種類は特定できていて、そのほとんどがワクチンの接種で防ぐことができると言います。

子宮頸がんの原因になるHPVは性的接触によって感染し、男女ともにほとんどの人が20代のうちに感染することになります。そして、一部の人から10年、20年と時間をかけてがんが発症してくるのです。感染が起きる前の年代で予防接種をしておくことが予防において最も効果的です。

世界では、15年以上前からワクチン接種が進み、接種率が8割を越える国々でここ数年、子宮頸がんの予防効果が目に見えるデータとして次々と表れてきました。

英国やスウェーデンやデンマークでは、適切な年齢でワクチンを接種することで、子宮頸がんのリスクを9割近く下げることができたというデータが示されました。

さらに、スコットランドで1988年から96年生まれの女性45万人を追跡調査した研究結果が今年発表され、13歳までにHPVワクチンを接種した人々が25歳となり、子宮頸がん検診を受けたところ、子宮頸がんの発症例はゼロ。

ワクチンを接種しなかった集団では、10万人あたり8.4例が罹患していて、接種と検診を適切に進めている国々では、今後も子宮頸がんの罹患者が激減していくことが予想されます。

子宮頸がんは撲滅することができるがんになりました。子宮頸がんの罹患者が年間10万人のうち4人以下になることを、イギリスでは2040年まで、オーストラリアでは2035年までに達成できる具体的に実現可能な目標として掲げています。

22世紀になって振り返ったとき、HPVワクチンによって子宮頸がん・HPV関連がんがほぼ制圧できたということが歴史に刻まれるでしょう。21世紀の人類最大の医学的到達の一つとなるような発見と研究の成果です。

一方、日本の女性たちは全く違う状況に置かれています。これは子宮頸がんの罹患率を各国と比べたグラフです。子宮頸がんの予防が先進的に進められてきた国と比較すると、日本では増加が続いていることがわかります。

近年ではヨーロッパや、オーストラリア、韓国より高いレベルになっていると報告されていて、接種率が伸び悩む状況が続けば、今後も日本の女性が子宮頸がんに罹患する割合は増えていく恐れがあると指摘されています。日本では、HPVワクチンの接種率が著しく低下した経緯があるからです。

HPVワクチンは2009年に緊急促進事業として接種が開始され、2013年には12歳から16歳の女性が対象の定期接種となり、実質無料で接種できることになりました。

しかし、定期接種として始まった直後、HPVワクチンを接種したあとに体の痛みなどを訴える女性が相次いだことを受けて、厚生労働省は積極的な接種の呼びかけを一時的に中止しました。当時、『ワクチンの副作用ではないか』という指摘が出され、大きく報道されました。また、接種後に体の痛みなどの重い症状が出たとして、130人の女性が国と製薬会社を相手に治療費の支払いなどを求める訴えを起こしています。

その後、国内外で安全性や有効性に関する研究が進み、厚生労働省は「子宮頸がんを予防する効果のほうが副反応などのリスクよりも大きい」などとして、2022年4月に積極的な接種の呼びかけを再開しました。積極的な呼びかけが中止されていた9年の間、定期接種対象の女性には、HPVワクチンに関する情報が届くことがほとんどない状態が続きました。その結果、「救えるはずの命が救えない事態が実際に起きている」とされています。

HPVワクチンの接種後に、体の広い範囲に広がる痛みや手足の動かしにくさなど、「多様な症状」が起きたとする報告が、国に上がっています。厚生労働省によると、接種した1万人のうち約3~5人が入院にいたるなどの重篤な症状として報告されています。しかし、症状が起きていることは事実でも、これが「HPVワクチンそのもののせいで起きた症状とはいえない」というデータが次々と出てきました。つまり、ワクチンを接種した後に出たと報告されたさまざまな症状がワクチンを接種していない人にも出ていたことが確認されました。

ヨーロッパの国々やアメリカ、韓国などでもHPVワクチンと副反応の疑いがある症状についての大規模調査が行われましたが、いずれも「接種していない人にも同様の症状が一定数起きていた」、「発生頻度にも有意な差はない」などの結果でした。

こうした結果に加え、子宮頸がんそのものを予防する効果についても海外から報告が続いたことで、厚生労働省は「ワクチンの有効性が副反応のリスクを大きく上回る」などとして、9年ぶりに積極的な接種の呼びかけを再開したのです。

さらに、HPVワクチンとの因果関係は不明でも、HPVワクチンの副反応の疑いがあると報告された人について厚生労働省による追跡調査も行われました。その結果、発症日などの詳細が把握できた人のうち、約70%の人は、7日以内に症状が回復。約90%の人は症状が回復または軽くなり、約10%の人は症状が続いていました。副反応はそんなすごい確率で起きることはないということも分かってきましたし、もしもの時の診療体制も構築されています。

9年の空白によって、子宮頸がんにつながりうる症状が増え始めている現状を受け、知らないまま接種の機会を逃す女性を一人でも減らそうとする動きが加速しています。


いわゆる「先進国」で子宮頸がんの患者がいるのは日本だけという状況がもうすぐです。

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