Clonal selection drives genetic divergence of metastatic medulloblastoma
以下は、論文要約の抜粋です。
髄芽腫(Medulloblastoma)は最も高頻度の小児脳腫瘍であり、小脳内で発生し、脳と脊髄を被うクモ膜下腔内の脳脊髄液を介して広まる。予後不良の指標であるこのような広がり(播種)は、髄芽腫診断時には40%の患者に認められることもあり、再発時には患者の大半に認められる。脳脊髄液を介した播種の機序はあまり研究されておらず、転移した腫瘍は生物学的に原発腫瘍と同じだと考えられてきた。
今回我々は、マウスおよびヒトの髄芽腫において、一個体での転移巣間での類似性はきわめて高いが、転移巣と原発腫瘍とは異なっていることを示す。転移巣と同一クローンであるのは、原発腫瘍の限られたサブクローンのみであり、このことは原発腫瘍内のごく一部の細胞のみが転移能を持つことを示唆している。
転移性髄芽腫が原発腫瘍と生物学的にはっきり異なるという事実が明らかではなかったことが、有効な分子標的治療が開発されなかった理由かもしれない。
髄芽腫のモデルマウスとヒト患者のゲノム異常とDNAメチル化パターンを調べたところ、各個体における転移巣と原発腫瘍とは大きく異なるが、転移巣どうしは似ていることが明らかになったという話です。
これらの結果は、下図のように、原発腫瘍中に発生した転移能をもつサブクローンからクローン選択的に転移巣が進化したことを示しています。このような仮説は、30年以上前から提唱されていたそうですが、個々の腫瘍のゲノム解析が可能になった現在になって初めて証明されました。
臨床的には、原発腫瘍と転移巣とでは異なった治療戦略が必要であることを意味しています。髄芽腫以外のがんでも同じようなゲノムや生物学的な違いが原発巣と転移巣の間に存在するのかどうかが知りたいところです。
転移の2コンパートメント仮説(Natureより)
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