発症リスクに関わる遺伝子座108個同定=統合失調症

発症遺伝子108個特定=統合失調症、新薬に期待―国際グループ
以下は、記事の抜粋です。


統合失調症の発症に関連する遺伝子のうち108個を、藤田保健衛生大の岩田仲生教授らが参加する国際研究グループが突き止めた。統合失調症の治療薬は現在1種類しかないが、新薬の開発につながる可能性がある。

研究グループは、31カ国の研究機関から提供された約3万7000人の統合失調症患者のゲノムデータを解析。研究グループが健常者のゲノムと比較したところ、統合失調症を引き起こす108個の遺伝子を一つでも持っていると、1.1~1.2倍発症しやすくなることが分かった。

統合失調症は100人に1人が発症するとされるが、原因は分かっていない。関連の遺伝子はこれまでに25個が見つかっていたが、今回新たに83個を特定した。計108個の中に、主な関連遺伝子が含まれているという。

岩田教授は「108個の遺伝子を丁寧に調べることで、新薬の開発も期待できる」と話している。


元論文のタイトルは、”Biological insights from 108 schizophrenia-associated genetic loci”です(論文をみる)。

患者とコントロールの合計が14万人を超える、史上最大の統合失調症ゲノムワイド解析です。25カ国から80以上の研究機関と500人以上の研究者が参加しています。著者も300人です。ヒト遺伝学的解析手法の成熟度を考えると、統合失調症の発生リスクと関わる遺伝子の遺伝学的同定は、これで終わりかもしれません。

これまで関連が報告されていた25個の遺伝子の中には、ドーパミンD2受容体や電位依存性カルシウムチャネルをコードするなど何度も同定されていたものがあり、自閉症スペクトラム障害などとのオーバーラップも再確認されました。

グルタミン酸神経経路や免疫関連の遺伝子が多く同定されたことは、新薬の開発に道を開くものかも知れません。また、喫煙と関連する遺伝子が同定されたことは、一卵性双生児が統合失調症を発症する確率が50~60%であることを考えると、発症に対する環境の重要性も示唆していると思います。

ところで、私が探した限りでは、利根川進氏らのグループが華々しく報告したカルシニューリンのγサブユニットをコードする(8p21. 3 gene, PPP3CC、論文をみる)やEGR遺伝子ファミリー(論文をみる)は見当たりません。引用もされていません。ハズレだったみたいですね。カルシニューリンの条件的ノックアウトマウスが統合失調症のような症状を示したというのは何だったのでしょう?(論文をみる)。

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