糖尿病治療薬「メトホルミン」はがん治療にも効果的 安価な薬でがんを治療
以下は、記事の抜粋です。
メトホルミンは1950年代から糖尿病の治療に使われており、米国では糖尿病治療の第一選択薬となっている。これまでの研究で、メトホルミンを長期間服用すると、がん罹患率、がん死亡率が低下することが分かっている。
岡山大学の研究グループは今回の研究で、「制御性T細胞」の抑制効果があることを解明した。「制御性T細胞」は、体に対する過剰な免疫反応を抑えている。制御性T細胞は、免疫反応の抑制を行うT細胞の集団で、過剰な免疫応答を抑制するためのブレーキ役を担っている。
しかし、この制御性T細胞はがんに対する免疫反応も抑制してしまい、がんの増大を許してしまう。そのため、がんの予防や治療のためにはこの細胞の数を減らすか、その機能を抑制することが肝要となる。
自己免疫疾患を発症することなく、がんだけに対する効果的な免疫反応を得るためには、がんの中にある制御性T細胞だけを抑制し、がん以外の部分にある制御性T細胞の数と機能には影響を及ぼさないことが理想的だ。岡山大学の研究グループは、2型糖尿病治療の治療薬である「メトホルミン」が、がん局所に存在する制御性T細胞の増殖と機能を抑制することを明らかにした。
研究グループが、担がんを発症したマウスにメトホルミンを投与したところ、がんの中で増殖するはずの制御性T細胞がアポトーシスに陥り、その数が激減することを発見した。詳しく調べると、制御性T細胞の本来のエネルギー代謝である脂肪酸に依存した酸化的リン酸化反応が減少し、代わりに糖に依存した解糖系が亢進することが分かった。これにより、がんを増やす制御性T細胞が細胞死するという。
メトホルミンには、免疫細胞の代謝バランスを変化させることで、今まで不可能だったがん局所だけの制御性T細胞の抑制をもたらす効果がある。
なお研究成果は、制御性T細胞だけではなく、脂肪酸を取り込んでいる他の免疫抑制的な細胞集団の制御にも応用できる重要な知見を提供しており、その分子機構のさらなる解明が期待される、と研究グループは述べている。
元論文のタイトルは、”Attenuation of CD4+CD25+ Regulatory T Cells in the Tumor Microenvironment by Metformin, a Type 2 Diabetes Drug(2型糖尿病治療薬メトホルミンによる腫瘍微小環境におけるCD4+CD25+制御性T細胞の抑制)”です(論文をみる)。
上の結果はあくまでマウスのものです。以下のようなメタ解析の論文もあり、結論として、「メトホルミンはがん患者の全生存期間および無増悪生存期間を有意に延長するものではないが、がん発生リスクを効果的に低下させる可能性がある。」としています。予防には効果があるかもしれませんが、治療には?だと思います。
Preventive and Therapeutic effects of Metformin in Cancer: A Meta-Analysis of RCT and Cohort Studies(癌におけるメトホルミンの予防効果と治療効果: RCTおよびコホート研究のメタアナリシス)

岡山大論文の主張
コメント