以下は、記事の抜粋です。
本研究では、病気の時にみられる特定の食品の嗜好について、生物学的基礎も示唆している。さらに、調査結果は、医師が、急性感染症の患者を治療する方法にも影響を与える可能性もある。
免疫系や疾病経過に対する絶食などの特定の疾病応答の効果について調べるために、研究チームは、ありふれたウイルスや細菌に感染させたマウスに、栄養が与える影響を観察した。
「空腹時代謝は保護的に働くのか、あるいは有害なのかということが疑問であった。」 研究者らが動物に餌を与えたとき、ウイルス感染した動物は生き残ったが、細菌に感染した動物は、病気で死亡することを発見した。
個々の栄養素(脂肪、たんぱく質、グルコース)をテストすることによって、グルコースが、感染時に栄養が逆効果をもたらす原因であると判断した。グルコース代謝を抑制する化学物質を使用してみた。すると、結果が逆になった。細菌に感染したマウスが生き延びることができたが、ウイルスに感染したマウスは死亡した。
研究者らは、 「ウイルス感染のとき、食べることで生存に必要となる可能性のあるグルコースを与える。逆に、絶食は、他の種類の燃料であるケトンの産生につながる。このことは、動物が細菌感染に耐えるのを助ける可能性がある」という。
元論文のタイトルは、”Opposing Effects of Fasting Metabolism on Tissue Tolerance in Bacterial and Viral Inflammation”です(論文をみる)。
上記のCell誌に掲載された論文では、メカニズムを下図のように説明しています。
細菌感染では、活性酸素(reactive oxygen species (ROS))が細胞毒性を発揮し、ウイルス感染では小胞体ストレス(unfolded protein response (UPR))が細胞毒性を発揮します。食事により体内で増加するブドウ糖(glucose)がROS産生を増加させて細菌感染による細胞毒性を悪化させる一方、ウイルス感染による小胞体ストレスを抑制してウイルス感染による細胞障害を改善するのだろうと議論しています。
ただ、記事にも書かれているように、この実験ではすべての細菌とウイルスを試したわけではないので、臨床に応用するためには個々の感染症における栄養の影響を確認する必要があります。また、高齢など宿主側の条件にもよるので、「細菌感染→絶食」と早とちりしないようにお願いします。
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