若い血液との交換で若返りが可能?

若い血液との交換で若返りが可能?
以下は、記事の抜粋です。


記憶、筋力などの若返りを実証する3つの研究が、Nature MedicineとScienceに同時に発表された。3論文は共に、若い血液が年をとった動物に再生効果をもたらす可能性を示唆している。若い血液は、心臓肥大やアルツハイマー病のような加齢による症状に関連した認知機能の低下を好転するのに役立つかもしれない。

Nature Medicineに発表された1つ目の研究の実験では、18カ月のマウスと3カ月のマウスの循環系が接合された。時間の経過とともに、若いマウスと繋がった年老いたマウスの脳内でより多くの神経細胞間の新しい結合が確認された。

さらに研究者らは、若いマウスの血漿を年老いたマウスに直接注射する実験も試みた。血漿を注射されたマウスは、されなかったものより水迷路に隠された休憩台の見つけ方をよく記憶していた。だが、加熱した血漿には、そのような効果は見られなかった。循環因子がタンパク質であるということを示唆する。

Scienceに掲載された2つ目の研究では、同様の循環系結合実験、あるいは若い血液から採取した特定のタンパク質を年老いたマウスに注射した結果、古い筋幹細胞のDNAが修復され、筋線維とミトコンドリアがより健康で若々しいものに変化し、マウスの握力が向上し、さらにトレッドミルでより長い時間走るようになった。

GDF11と呼ばれるたんぱく質は、加齢に伴った心肥大を減少させることが既に知られている。新しい研究によって、GDF11が骨格筋や脳といった組織にも同様の若返り効果をもたらすことが示された。

Scienceに発表された3つ目の研究では、同様の実験によって、若い血液が脳室下帯とよばれる脳内領域の循環を高め、新しい神経細胞の生成が活性化することが明らかとなった。これらの新生細胞が嗅球に移動して成長すると年老いたマウスの嗅覚は改善された。


1つ目の論文のタイトルは、”Young blood reverses age-related impairments in cognitive function and synaptic plasticity in mice”です(論文をみる)。

2つ目の論文のタイトルは、”Restoring Systemic GDF11 Levels Reverses Age-Related Dysfunction in Mouse Skeletal Muscle”です(論文をみる)。

3つ目の論文のタイトルは、”Vascular and Neurogenic Rejuvenation of the Aging Mouse Brain by Young Systemic Factors”です(論文をみる)。

2つの個体の循環系を結合する実験は”parabiosis”とよばれ、約150年前に既に行われていたそうです。2000年頃、当時ポスドクだった2つ目と3つ目の論文の著者であるAmy J. Wagers氏らがこの方法を復活させ、「若い血」が老齢マウスのさまざまな機能を改善することを示してきました。

Wagers氏は「若い血」の中の有効成分を追いつめ、その一つがGDF11とよばれる因子であることを明らかにしたというのが論文の主旨だと思います。

GDF11はBMP11ともよばれます。BMPは”Bone Morphogenetic Protein”の略で、1965年頃に骨形成能をもつタンパク質として同定された個体発生に必須のサイトカインです。BMPは多数の遺伝子でコードされる分子種からなり、TGF-βファミリーに属するタンパク質です。

GDF11をヒトにどんどん注射するのは危ない気がします。「若い血」の中にGDF11とは異なるもう少し使いやすい「若返り因子」があることに期待します。

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