以下は、記事の抜粋です。
インドを中心とする東南アジアで、形成外科手術や美容整形術を受けた人が薬剤耐性の高い細菌に感染する例が増えている。
英Cardiff大のTimothy Walsh氏は2009年、2種類の細菌、すなわちクレブシエラ菌と大腸菌の中に、異なる種の細菌を行き来できるNDM-1(New Delhi metallo-beta-lactamase-1)という遺伝子を初めて特定した。保菌者はインドの病院で手術を受けたスウェーデン人だった。
NDM-1をもつ細菌は、多剤耐性菌の治療で「最後の手段」とされているカルバペネム系抗生物質にさえ耐性を示す。8月11日のThe Lancetに掲載されたCardiff大とインドMadras大による研究で報告された。
インドで調査したところ、同国南部のChennaiで44人、北部のHaryanaで26人の感染者が見つかった。さらにバングラデシュとパキスタンに加え、英国でも37人が感染していることが分かった。英国の感染者の一部は最近、インドあるいはパキスタンで美容整形手術を受けていた。
研究チームは「英国人以外にもインドで整形手術を受ける欧米人は多いため、NDM-1は世界中に広がる恐れがある。航空機による移動が増えた今では、遺伝子は簡単に国境を越える」と警鐘を鳴らしている。
専門家は、インドで医療処置を受けた人は、自国で治療を受ける際に多剤耐性菌に感染していないか検査を受けるべきだと忠告している。
元論文のタイトルは、”Emergence of a new antibiotic resistance mechanism in India, Pakistan, and the UK: a molecular, biological, and epidemiological study.”です(論文をみる)。
実験では、患者から腸内細菌を分離し、培養して抗生物質耐性を調べ、 NDM-1遺伝子の存在はPCRで確認しました。細菌のタイピングは、ゲノムDNAのパルスフィールド電気泳動により行いました。プラスミドは、S1ヌクレアーゼによる消化とPCRタイピングによって解析しました。
調べた結果、NDM-1を持つ耐性菌はインドのChennaiから44例、Haryanaから26例、イギリスで37例、他のインドあるいはパキスタンの施設からは73例みつかりました。NDM-1がみつかった細菌は、大部分が大腸菌(36例)とクレブシエラ(Klebsiella pneumoniae、肺炎桿菌、111例)で、これらはtigecycline とcolistinを除くすべての抗生物質に耐性を示しました。
Haryanaからのクレブシエラは単クローン由来でしたが、イギリスとChennaiのものは多クローンにわたっていました。単離された多くの細菌はプラスミド上にNDM-1遺伝子を持っていました。Haryanaからのものには接合能がありませんでしたが、イギリスとChennaiのものは、トランスファー可能でした。
簡単に感染する菌ではありませんが、メディカル・ツーリズムの思わぬ落とし穴ですね。以下は、このニュースの動画です。
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