おしっこが黄色いのは腸内細菌の酵素がビリルビンをウロビリノーゲンに分解するから

125年以上謎だった、おしっこが黄色い理由を科学者が解明。ビリルビン分解酵素「BilR」発見
以下は、記事の抜粋です。


1月3日付けの科学雑誌に掲載された研究によると、科学者らは長らくわかっていなかったおしっこを黄色くする酵素を特定したとのことです。

おしっこ、すなわち尿は、血液が腎臓で濾過されて余分な水分、電解質その他老廃物の混合物として排出された液体です。その色は、いまから125年以上も前にウロビリンと呼ばれる成分からのものであることが判明しています。ところが、このウロビリンが酸化する前のウロビリノーゲンがどうやって生成されるのかが、正確な過程はこれまでずっとわかっていませんでした。

体内の赤血球が代謝する過程で赤血球が寿命を迎えて分解されると、ビリルビンと呼ばれる明るいオレンジ色の色素が生成されます。この色素は腸内に分泌され、一部はそのまま排泄され、一部は再び吸収されます。腸内には、このビリルビンを尿を黄色くするウロビリノーゲンに変換する酵素が存在すると考えられていました。

今回の研究で特定されたのが、このビリルビンをウロビリンに変換する酵素で、研究者らはこれをビリルビン還元酵素(BilR)と名付けました。

BilRは健康な成人の腸内細菌叢には必ず存在し、この酵素によってビリルビンが無色のウロビリノーゲンに変換され、ウロビリノーゲンはその後、酸化して黄色いウロビリンになる、ということです。

なお、研究ではビリルビン還元酵素は大腸に存在するファーミキューテス (Firmicutes)と呼ばれる腸内細菌によって産生されることもわかりました。

尿が黄色くなるメカニズムを解明するのに125年以上もの時間がかかった理由は、腸内細菌の研究が、最近までは非常に困難だったからだと述べています。腸内は低酸素環境であるため、腸内細菌の多くは酸素が多すぎると死滅してしまうため実験室における培養や実験が困難だった。

BilRの発見とともに、研究者らはそれがすべての健康な成人に存在する一方で、新生児や炎症性腸疾患の患者の身体には存在しない場合があることも発見しました。


元論文のタイトルは、”BilR is a gut microbial enzyme that reduces bilirubin to urobilinogen(BilRはビリルビンをウロビリノーゲンに還元する腸内細菌酵素である)”です(論文をみる)。下の論文要約をみると新生児や炎症性腸疾患の患者の身体には存在しないのではなく少ないだけのようです。また、ファーミキューテス (Firmicutes)属の細菌は、腸内だけではなく身体のいろいろな部分に住んでいるようです。

以下は、元論文の要約です。


過剰な血清ビリルビンは黄疸や神経障害を引き起こす可能性があるため、ヒトとその腸内細菌叢によるビリルビンなどのヘム副産物の代謝は、ヒトの健康に不可欠である。この経路の重要なステップであるビリルビンをウロビリノーゲンに還元する細菌酵素は、これまで未同定のままであった。今回我々は、生化学的解析と比較ゲノム解析を用いて、ビリルビンをウロビリノーゲンに還元する腸内細菌由来のビリルビン還元酵素としてBilRを同定した。ビリルビンの還元に重要な残基を同定することで、類似の還元酵素とBilRの配列を区別し、BilRは主にファーミキューテス属にコードされていることを明らかにした。ヒトの腸内メタゲノム解析から、BilRは健康な成人ではほぼどこにでも存在するが、新生児や炎症性腸疾患の患者では保有率が低下することが明らかになった。この発見は、ビリルビン代謝における腸内細菌叢の役割に光を当て、ビリルビンの恒常性維持における腸肝軸の重要性を明らかにするものである。

身体のいろいろな部分に住む細菌

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