人はなぜワクチン反対派になるのか ―コロナ禍におけるワクチンツイートの分析
以下は、記事の抜粋です。
コロナ禍以前からワクチン反対派であった人々は政治への関心が高くリベラル政党とのつながりが強いのに対して、コロナ禍で初めてワクチン反対派になった人々は政治への関心は薄い一方で、陰謀論やスピリチュアリティ、自然派食品や代替医療への関心が強く、これらのトピックへの関心がワクチン反対派になるきっかけとなっていることを示した。
本研究はまず、2021年1月から12月までに収集された「ワクチン」を含む約1億件のツイートを収集し、機械学習を用いて「ワクチン賛成ツイート」「ワクチン政策批判ツイート」「ワクチン反対ツイート」の3クラスタを抽出した。次に、「ワクチン反対ツイート」を多くつぶやいたりリツイートしているアカウントを特定し、「ワクチン反対ツイート拡散アカウント」として定義した。そして、「ワクチン反対ツイート拡散アカウント」を多くフォローしているユーザを「ワクチン反対派」として定義した。
分析は主に3つの視点から行われた。第1に、ワクチン賛成派と反対派を比較し、反対派の特徴を明らかにした。第2に、コロナ禍以前から反対派であったユーザとコロナ禍以降に新規に反対派になったユーザを比較し、新規に反ワクチン的態度を持つようになったユーザの特徴からワクチン反対派になる「きっかけ」を明らかにした。第3に、政党やその党首のアカウントのフォロー率を分析することで、新規にワクチン反対派になったユーザの政治的特徴を明らかにした。
第1の分析からは、ワクチン反対派は賛成派と比べて政治的関心が強いことが明らかになった。右派的な傾向を見せるユーザもいるが、リベラルな傾向を見せるユーザの方が多数派を占める。一方、ワクチン賛成派はワクチンに関するツイートやリツイートはしているものの、主にゲームやアニメなど私的な趣味への関心が強く、政治への関心は弱かった。
第2の分析からは、コロナ禍以前からワクチン反対派であったユーザは特に政治的関心が強くリベラルな傾向を見せるのに対して、コロナ禍以降にワクチン反対派になったユーザは政治的な傾向が弱いことが明らかになった。一方、コロナ禍以降にワクチン反対派になったユーザは陰謀論やスピリチュアリティに関する単語がツイッターのプロフィール文に頻繁に表れることが明らかになった。例としては「三浦春馬」「集団ストーキング」「テクノロジー犯罪」「波動」「宇宙」などが挙げられる。したがって、コロナ禍以降に新規にワクチン反対派になった人々は陰謀論やスピリチュアリティに対する関心がきっかけとなって反ワクチン的態度を持つようになった可能性が示唆される。
第3の分析からは、コロナ禍以前からワクチン反対派であったユーザは立憲民主党やれいわ新選組、日本共産党のアカウントをフォローする率が高いのに対して、コロナ禍以降に新規にワクチン反対派になった人々はこうした既存の政党をフォローする傾向が弱いことがわかった。しかし、コロナ禍以降に新規にワクチン反対派になった人々は2022年3月から9月にかけて参政党のアカウントをフォローする率が急上昇しており、陰謀論やスピリチュアリティをきっかけとして反ワクチン的態度を持ち、さらに反ワクチンを掲げる参政党への支持を高めた可能性が示唆された。
これらの結果は、コロナ禍における新たなワクチン反対派は政治的な傾向をベースにしたものではなく、陰謀論やスピリチュアリティをきっかけとしたものであることを示している。しかし、いったん反ワクチン的態度を持つようになると、反ワクチンを掲げる参政党への支持を強め、このことが2022年参院選における参政党の議席獲得に貢献した可能性がある。実際、参政党は国際ユダヤ資本などの陰謀論、「風の時代」などのスピリチュアリティ関連語を選挙キャンペーン中に用いており、こうしたトピックに関心を持つ人々に支持を訴えていた。このことは、陰謀論やスピリチュアリティをきっかけにワクチン反対派が国政において代表されるに至るプロセスを示している。
陰謀論やスピリチュアリティそのものは直接的に政治的含意を持たない場合もあるが、これらがゲートウェイとなって反ワクチン的態度を持つようになる人がいることが明らかになった。
私の知っている反ワクチンの歯医者は、ツイートをするにはあまりに情弱ですのでこの分析にはかかりそうもありません。彼は、自分の周辺の副反応が強かった数例だけを根拠に反ワクチンを標榜していました。私は単に論理的思考ができないだけかと思っていましたが、彼の妻が自然派食品の愛好者というのがわかりました。こういう例があることを考えると、ツイートするという人達だけを対象に反ワクチン人種を考察するのはイマイチな発想だと思います。
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