機能不全の査読システムを補完するResearchGateの”Open Review”

STAP細胞論文が論文の査読に代わる新システム「Open Review」の事例に登場
以下は、記事の抜粋です。


400万人もの研究者が参加しているSNS「ResearchGate」が、論文や刊行物・出版物をオープンな場でレビューできるサービス「Open Review」の提供を開始しました。

論文の内容が学術雑誌に載るときには「査読」を経ていますが、査読対象の論文の本数は非常に多い上にその中に「新発見」と呼べるようなものはわずかなので、論文査読者はくたくた。論文が雑誌に掲載されてから誤りが見つかったり、本当は価値がある研究なのに日の目を見ないという事態も起きています。

そこで、ResearchGateが作り出したのが「Open Review」です。Open Reviewでは、論文に対して再現性のフィードバックを行ったり、興味ある研究について他の専門家の査読を要望したり、刊行物について著者や専門家と議論することができます。

(その例として、)理化学研究所が発表して「常識を覆す大発見」だと称賛されるも、その後、多くの疑問点が出てきている「STAP細胞」の論文には、香港中文大学の李嘉豪(ケネス・リー)教授がレビューをつけています。

論文についてリー教授は、リファレンスは適切かつ意味のあるもので、細胞のリプログラミングにおいて他にも単純で素晴らしい方法があるのではないかという刺激を与えるものであるということは認めましたが、「実験が適切だったか・データは正確か」という点で疑問があると述べ、「再現可能性がない」と結論づけました。


私にもResearchGateから3月14日の午後11時19分に、”Peer review isn’t working. Find out about Open Review.”というメールが来ました。以下がそのメールです。

「我々は、研究論文のオープンかつ透明性のある評価に役立てるために、”Open Review”をデザインしました。あなたが最近引用した論文をいくつか評価(review)することで、このシステムをご理解ください。」と書かれていました。

Find out moreをクリックすると、以下のような画面が出てきました。記事にあるSTAP細胞の論文のreviewです。

「Open Review」は査読に代わる新システムではなく、査読を補完するものだと思います。Natureなどインパクトにこだわる雑誌の査読は、”significance”や”general interest”にこだわり過ぎる結果、誇張や捏造を見逃しがちです。査読はインパクトを意識せず、科学的な妥当性と技術的な質だけに基づいて行い、significanceなどは掲載後の読者の判断(例えばこの「Open Review」)に委ねるというのが今後の望ましい方向だと思います。

今回のSTAP細胞事件は、ランディ・シェックマン氏が書いていた、””How journals like Nature, Cell and Science are damaging science”そのものです。「Open Review」のようなシステムが普及すれば、出世や資金獲得のために無理矢理にでも”luxury journal”に掲載しようとするバカバカしい現状が変わるかもしれません。

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