マイコバイオーム(Mycobiome)

腸内“真菌”と病との関係が明らかに、肥満や治療とも、進む研究…人体にすむカビや酵母などのコミュニティー「マイコバイオーム」とは
以下は、記事の抜粋です。


マイクロバイオームは近年、過敏性腸症候群から神経障害に至るまで、さまざまな病気との関連を示す数多くの研究によって、大きな注目を集めている。マイクロバイオームは微生物叢ともいい、皮膚、腸、呼吸器、泌尿生殖路などに共生する微生物のまとまりのことだ。

腸内のマイクロバイオームの中でも、とりわけ高い関心が寄せられているのはバクテリア(細菌)だろう。しかし、腸内にいるその他の微生物にも、体の全般的な健康にとって同じように重要である可能性を持ちながら、その価値が見過ごされているものは少なくない。

真菌(カビやキノコ、酵母など)のコミュニティーである「マイコバイオーム」はそのひとつだ。人体には、それぞれ独自のマイコバイオームが存在する。最近の研究では、マイコバイオームは危険な微生物の侵入を防いだり、免疫系を調整したりするのに役立っている一方、慢性疾患の原因になる可能性も示されている。

マイコバイオームはマイクロバイオームの約0.1%を占めている。人間の腸内には数百種の真菌がいることがわかっているが、多くの人に共通して見られるのは、そのうち数十種に限られる。こうした腸内の真菌コミュニティーについて、新型コロナ後遺症をはじめとする数々の病気や、その他の腸、神経、呼吸器疾患との関連が見つかり始めている。

現代の遺伝子配列解読ツールのおかげで、科学者は、腸などの臓器に存在するすべての微生物を割り出すことができる。健康な人と疾患を持つ人のマイコバイオームを比較した研究では、クローン病の患者は、腸内に「カンジダ・アルビカンス」という真菌が多い傾向が示されている。

また、セリアック病、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)、大腸がん、その他さまざまな腸疾患には、腸内微生物のバランス異常が関連していると指摘されている。

たとえば、香港中文大学の黄秀娟氏は、肥満の人の腸内マイコバイオームが、肥満でない人たちとは異なっていることを発見した。氏が現在進めている研究では、食物を分解しやすい特定の細菌と真菌がいるという理論を検証しており、すでに脂肪の分解に関与していると思われる真菌の分離に成功した可能性があるという。

ワイル・コーネル医科大学のイリヤン・イリーブ氏らは、重症の新型コロナ患者において、新型コロナ感染後に腸内の真菌が、好中球を活性化することによって、肺に破壊的な炎症を引き起こす可能性があることを発見した。

マイコバイオームはまた、「腸脳軸(腸脳相関)」の重要な要素となっている可能性がある。腸脳軸とは、腸と脳の間で双方向に情報がやりとりされるシステムのことだ。研究では、自閉症の人とそうでない人のマイコバイオームには違いが見られることが示されている。

また、真菌のバランスの崩れは、腸以外の病気、たとえば喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患、さらにはいくつかの皮膚疾患とも関連が示されている。

科学者らは、真菌を含む微生物のバランスを整えることができる薬やサプリメントを探している。「マイコバイオーム」という言葉を考案したケース・ウェスタン・リザーブ大学のマフムード・ガヌーム氏もその一人だ。氏は、腸内バランスを再調整するサプリメントを開発した。このサプリメントは、胃腸症状を軽減する効果が示された。

黄氏のチームは、特定の病気の治療に糞便移植が有効である可能性を示したという。健康な人の便から微生物を分離し、それを移植することによって、子どもの移植片対宿主病(骨髄移植などの合併症で、ドナー由来の免疫細胞が患者の組織を攻撃して起こる病気)の症状を軽減できることを示した。


ピロリ菌の除菌などで抗生物質を服用すると腸内細菌の多くが死んで細菌叢が変化することは良く知られています。ほどんどの抗生物質は真菌には効果がないので、真菌叢も変化するのでしょう。

記事のタイトルをみて、かなり期待しましたが、もうちょっとヒトの病気や生理機能との関係がはっきりしていることが分かっているのかと思いました。これから伸びる分野であることを期待しています。

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