コロナ重症化防ぐ切り札? 抗体カクテル療法とは 東北大・加藤教授に聞く
以下は、記事の抜粋です。
新型コロナウイルス感染症の治療薬「抗体カクテル療法」とはどのようなものなのでしょうか。初の軽症者向けの薬で、患者の重症化と医療体制の崩壊を防ぐ切り札として期待されています。
―抗体カクテル療法は頼みの綱になりますか。
効果などを調べた海外の試験では、重症化リスクが7割下がったというデータがあります。医療現場で定着すれば、来年には流行は収束すると思います。ワクチンだけに頼るよりいいでしょう。
―そもそも抗体とは何ですか。
ウイルスが体の細胞に入り込み、増殖することで感染します。対する抗体はウイルスの表面にくっついて体に入り込むのを防ぎ、増殖させないようにします。
―抗体カクテル療法で2種類の抗体を交ぜて使うのはなぜですか。
1種類では効かなかったからです。ある抗体が、あるウイルスにくっつく箇所は決まっています。その場所で変異が起きるとくっつかなくなります。また、1種類ずつ順に使っていたら、その間に患者は重症化し、亡くなってしまいます。
―さらに変異が進んだら効かなくなりますか。
2カ所とも変異が起きたら、新たな製剤が必要になります。ただ、この2種類は人工知能(AI)を使って、変異しにくいところを選び取っていると予想されます。
[メモ]抗体カクテル療法は米バイオ企業リジェネロン・ファーマシューティカルズが開発した。昨年10月、トランプ前米大統領が未承認ながら特例で投与を受け「神の恵みだ。(感染した)皆さんにも同じ治療を受けてもらいたい」と絶賛した。翌11月、米食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可を出した。日本では今年7月、特例承認された。厚生労働省は当初、投与後の容体悪化に対応できる医療機関や宿泊施設で、入院患者のみに投与を認めていた。各地の病床逼迫を受け、外来患者に対しても投与を認める方針に転換した。
商品名は「ロナプリーブ」です。海外の臨床試験では、入院や死亡のリスクを約70%減らす効果が確認されています。日本では7月19日に特例承認され、入院患者だけでなく医師が対応できる宿泊療養施設での使用も認められるようになりました。軽症の患者が重症化するのを防ぐ目的で行われます。
新型コロナウイルスは基礎疾患がなくても急激に悪化して亡くなるケースがあるので、軽い発熱や咳などの軽症のうちに重症化するのを防ぐのに有用だと思われます。
「コロナ感染症の重症化リスクを持ち、酸素投与を必要としない」患者が対象で、発症後速やかに投与開始することが求められます(投与開始が発症から8日目以降の場合には有効性データなし)。そのためにも、入院患者だけではなく、外来患者にも使えるようになったのは良かったと思います(ただし今のところは入院治療を行う医療機関でのみ)。ということで、小さなクリニックでは今のところ使えません。
問題は、抗体製剤は精製に手間がかかり大量生産が難しいため薬価が高額になることです。今回の抗体カクテル療法は1回でおよそ25万円とされています。政府が使用をかなり制限しているのもこのあたりが理由かもしれません。
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