Lifespan extension induced by AMPK and calcineurin is mediated by CRTC-1 and CREB
以下は、論文要約の抜粋です。
AMPKの活性化、あるいはカルシニューリンの不活性化は線虫(C. elegans)で老化を遅くするので、哺乳動物においても加齢に関連した病理的変化の治療標的として重要だと考えられている。しかし、長寿効果を直接仲介する標的分子はまだ明らかでない。
哺乳類において、CRTC(CREB-regulated transcriptional coactivator)は、エネルギー・ホメオスターシス、がん、小胞体ストレスなどの多様な生理過程に関係するコファクターのファミリーである。本研究では、AMPKとカルシニューリンは、線虫の唯一のCRTCであるCRTC-1の翻訳後修飾だけによって寿命を調整していることを示す。
我々は、CRTC-1がAMPKによって直接リン酸化され、in vivoでCRH-1(CREB
homologue-1)転写因子と結合することを示した。AMPK活性化あるいはカルシニューリン不活性化は、CRTC-1とCRH-1の活性を低下させ、CRH-1ノックアウト線虫に似た転写応答を誘導する。
CRTC-1 のダウンレギュレーションはCRH-1依存的に寿命を延長し、CRH-1発現を直接低下させても寿命が延長したので、CRTCとCREBの老化へのかかわりを裏づけている。
以上の結果は、CRTCとCREBがMPKとカルシニューリンの下流で、寿命決定における新たな役割を果たすことと、進化的に保存された経路が低エネルギーに反応して寿命を延長する分子機構を明らかにした。
飢餓状態で線虫の寿命が延びるメカニズムに、細胞内ATP量の低下で活性化されるAMPKが関与している話はリーズナブルだと思いますが、細胞内カルシウム濃度の上昇で活性化されるカルシニューリンの活性がAMPKと拮抗しているという話は少し抵抗があったので、論文を読んでみました。
AMPKがCRTCをリン酸化することは示されていますが、カルシニューリンが脱リン酸化することは示されていません。しかし、著者らは76番目と179番目のセリンを「保存された”AMPK/calcineurin sites”」と呼んでアラニンに置換し、置換した変異体がAMPKの活性化やカルシニューリンの抑制に不応性であることから、この2つのサイトをAMPKがリン酸化しカルシニューリンが脱リン酸化することで拮抗的に制御していると結論しています。
以前、ショウジョウバエの系でNFATキナーゼがDYRKであるという論文がありました(論文をみる)。そこで、カルシニューリンと拮抗的にリン酸化するキナーゼはDYRKではないかという仮説が立てられました。しかし、我々の系や哺乳動物細胞の系ではそうではなかったようです。
AMPKとカルシニューリンが、同じセリン残基をそれぞれリン酸化、脱リン酸化して拮抗的に制御するという仮設は興味深いし、実験も緻密にされているのですが、なんとなく話ができすぎているような気がします。
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