小保方晴子博士の「STAP細胞」特許出願は基本特許とはならない

小保方晴子博士の「STAP細胞」特許出願は基本特許となるか?

先日、知り合いの方から「小保方博士の特許に関する記事」というタイトルのメールをいただきました。メールの内容は「昨日お話しました小保方博士の特許に関する記事です(添付致します)。会社で知的財産(特許・実用新案・商標・意匠など)に関する業務も担当しておりますので興味がある記事でした。ご参考になれば幸いです。」でした。紹介されたのが、このブログ記事です。以下は、その抜粋です。


小保方博士の発見は、体細胞に一定のストレス(弱酸性の刺激)を与えることで、分化状態の記憶が消去され、多能性を再び獲得するということのようである。

小保方博士は、大学院時代に留学していたハーバード大のチャールズ・バカンティ教授らと共同で国際特許出願(公開公報WO2013/163296 A1”Generating pluripotent cells de novo”)をしている。

特許請求の範囲(クレーム)を読んで驚いた。請求項1には、「1. A method to generate a pluripotent cell, comprising subjecting a cell to a stress.(「細胞をストレスにさらすことを備える多能性細胞生成方法」)」と記載されているだけであり、素人の私でもわかる「そのまま」なのである。特許請求の範囲をいかに広く記載するかが、特許の価値を左右する。請求項1がこのまま特許になれば、間違いなく世界を制覇する「基本特許」となるだろう。

しかし、残念ながら、ここまで広い権利を取得することは難しいだろう。上記の公開公報の最後にはそのサーチレポートが添付されている。サーチレポートによれば、小保方博士の国際特許出願の請求項1は、別の日本人女性の先行技術により新規性がないとされている。

その日本人女性とは、東北大学の出澤真理教授である。彼女もまた、「Muse細胞」という多能性幹細胞の発見者として有名である。出澤真理教授の国際特許出願(公開公報WO2011/007900 A1「生体組織から単離できる多能性幹細胞」)には、「本発明者は、骨髄間葉系細胞画分や皮膚線維芽細胞画分等の間葉系細胞又は中胚葉系細胞を培養している際に種々の方法でストレス刺激を与え、生存している細胞を集め、メチルセルロース含有培地中で浮遊培養を行った。」と記載されており、請求項17には「生体組織由来細胞を細胞ストレスに暴露し生き残った細胞を回収することを含む多能性幹細胞又は多能性細胞画分を単離する方法。」が権利請求されている。

「細胞をストレスにさらして多能性幹細胞を生成する」という基本アイデア自体は、どうやら小保方博士のオリジナルではないようだ。そうすると、どのような細胞にどのような状態でどのようなストレスを与えるかといった多能性細胞の生成の条件を限定することが特許取得のために必要となりそうである。

小保方博士の国際特許出願では請求項13で、今回の弱酸性刺激以外にも様々なストレスが列挙されている。発明として完成している弱酸性刺激に限定するなら、特許が取得できる可能性は高い。


先日の記事乳酸菌による多能性細胞などを紹介して、ストレスによって細胞を多能化するのは小保方さんが最初に報告したわけではないことを紹介しましたが、「Muse細胞」を忘れていました。特許まで申請していたとはなかなかやり手ですね。

また、私の記事をみた友人から「あの太田さんのラボは、有名ラボです。教授が、田中さんといって、ドラキシンという分子の発見で、サイエンスなどに論文を出してます。太田さんはツクシという遺伝子の発見で有名です。残念なことに田中教授はこの1月に食道がんで亡くなりました。」というメールをもらいました。太田さん、失礼しました。

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