あらゆる変異株に対応する新型コロナワクチンが登場

あらゆる変異株に対応する新型コロナワクチンが登場、新型コロナのみならずSARS全体にも対応
以下は、記事の抜粋です。


新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株が登場するたびにそれに対応したワクチンが開発されていますが、SARS-CoV-2はそれ以上の速度で変異を続けており、ウイルスの変異とワクチン開発はいたちごっことなっています。ケンブリッジ大学などのグループが、既知および将来のすべてのSARS-CoV-2変異株に対する免疫を獲得できる可能性を持つワクチンを開発し、動物での試験で有望な結果を得たと発表しました。

すべてのSARS-CoV-2の変異株の表面にはスパイクタンパク質が存在しており、ウイルスはこれを使って細胞に侵入して感染します。これまで登場しているワクチンの多くはこのスパイクタンパク質を標的にしていますが、スパイクタンパク質はウイルスの突然変異により変化し続けるので、基本的に既存の変異株にしか効果を発揮できません。

変異株の課題を解決するため、ケンブリッジ大学のジョナサン・ヒーニー氏らはスパイクタンパク質の受容体結合部位(RBD, receptor binding domain)に着目しました。現行のワクチンはスパイクタンパク質全体を対象としているため、これを抗原として生成された抗体のうちRBDを標的にするのはわずか16%しかありません。

今回の研究でヒーニー氏らのチームは、SARS-CoV-2や2002年に発見された重症急性呼吸器症候群(SARS)のウイルスなどが属する「サルベコウイルス亜属」に対する広範な免疫反応を引き起こす抗原構造を特定し、これらのウイルスのRBDをベースとした抗原を生成することに成功しました。

研究チームが、この抗原を元に弱毒化ワクチンやmRNAワクチンを作成してマウス、ウサギ、モルモットに投与したところ、いずれも強力な免疫応答を引き起こすことができたとのこと。

このワクチンは、SARS-CoV-2のアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン株が出現する前のものから設計されたにもかかわらず、これらすべての変異株に対して強力な保護効果を提供したため、今後登場する新しい変異株にも効果があると考えられています。

研究チームは目下、このワクチンを用いた「ファースト・イン・ヒューマン試験」、つまり人間での最初の臨床試験を進めており、成功すればこれまでより効果的なSARS-CoV-2ワクチンが開発できるだけでなく、ほかのウイルスに対しても同様の効果を持つワクチンが登場する可能性があると期待されています。


元論文のタイトルは、”A computationally designed antigen eliciting broad humoral responses against SARS-CoV-2 and related sarbecoviruses(コンピューターにより設計されたSARS-CoV-2および関連サルベドウイルスに対する広範な体液性応答を誘発する抗原)”です(論文をみる)。

インフルエンザウイルスワクチンの場合、毎年流行しそうな株を予想してワクチンを作っています(少なくとも日本では)が、この方法を使えば毎年同じワクチンをいつでも打つことが理論的には可能です。免疫がどのくらいの期間続くのかなどの疑問はありますが、臨床試験の結果を注目しています。

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