近藤誠氏の本が売れる理由を考えてみました

最近、以下の例のように近藤誠氏を批判する記事が多いように思います。
「抗がん剤は効かない」のか?
上の記事を含む4つの連載記事で高野利実氏は近藤氏を批判しておられます。高野氏の要点は以下のようにまとめられています。


●「患者よ、がんと闘うな」→ 患者よ、がんとうまく長くつきあいましょう
●「がん放置療法のすすめ」→ がんとの共存のすすめ
●「抗がん剤は効かない」 → 抗がん剤論争に惑わされない ~自分の価値観を大切に~
●「医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする」→ 刺激的な情報も心穏やかに受け止め、医療と薬を自分なりに活用して、元気に、長生きする


長尾和宏氏も以下のような連載記事で近藤氏に反論しておられます。
「近藤誠現象」は検証の必要あり – 長尾和宏・長尾クリニック院長に聞く◆Vol.3
以下は、長尾氏が強調しておられるポイントです。


●「(近藤氏の理論は)極論に走っているので、犠牲者がたくさん出ていますよ」
●本を上梓したのは、近藤先生に何かを言いたかったわけではなく、患者さんにもっと賢くなってほしいという思いからです。
●終末期の延命治療については今、大きな転換期にあります。
●僕が唱える「平穏死」は、医療を否定しているわけではなく、終末期に不要な医療はしなくていい、緩和医療は必要という主張です。
●抗がん剤治療は、パラダイムシフトの前夜にあります。
●単に遺伝子検査を行うだけでなく、情報をどう管理し、いかに利用するかに関する議論が必要な時代なのです。しかし、医療自体をを否定していたのでは、こうした医学の進歩に伴い生じる諸問題を解決していくのは困難。
●がんセンターの先生方が無反応なので、正直、がっかりしています。
●僕自身は、町医者であり、予防と早期発見、そして終末期医療が本業。


これらの批判はすべて正しいと思います。どう見ても、近藤氏の書いたものは誤りだらけで、科学的な説得力はありません。しかし、近藤氏が書いた「医者に殺されない47の心得」は、今年上半期の書籍総合売り上げが70万部を超えるベストセラーになっています。なぜでしょう?

読者の大半は近藤氏の書いていることが誤っていることを百も承知なのだと思います。こういう本を買う人は、自分や身近なヒトががんに罹った時、治療しないことを本で正当化したいのではないでしょうか?近藤氏に習って極論すれば、自分の場合は自殺、他人の場合は殺人を正当化するための本なのかもしれません。

コメント

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    面白い例えを考えてみました。
    試験に落ちる人=不合格者
    試験に合格する人=不合格者もどき
    と置き換えてみます。
    「不合格者もどきのあいつは、勉強せんでも試験に通ったんちゃうん」 とか
    「どうせ試験に落ちるんやったら、勉強せんほうがええやん」 と言う声が聞こえてくるようです。
    楽することを正当化しようとしているようで、「勉強して不合格者もどきになりなさい」と言いたいです。
    「犯罪が起こる前に捕まえたら、犯罪者もどき」
     → パトロールは不要
    とか、
    「建物が倒壊しなければ地震もどき」
     → 耐震建築は不要
    とか、
    「濡れなければ雨もどき」 → 傘は不要
    などと思う人はまずいないと思うのですが・・・
    こと医療に関しては、リスクをゼロにすることが求められているようです。
    そもそも、発癌のリスクなしに生きることができないことや、癌を排除しながら生きているという現実に目を背けてはいけないと思います。

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