約200万人に日本人が原発性アルドステロン症!?…高血圧患者の約5%らしい

原発性アルドステロン症
最近、原発性アルドステロン症の患者さんを診る機会があったので、メモとして内分泌学会の記事を以下に抜粋しておきます。


原発性アルドステロン症とは
副腎からアルドステロンが自律的に過剰分泌される病気です。健常状態において副腎からのアルドステロン分泌は、体液量の低下を感知して腎臓から分泌されるレニンの制御を受け、塩分を体内に保持し、血圧を維持するはたらきを持ちます。レニンが低値にもかかわらず副腎からアルドステロンが過剰分泌される状態を確認することで、この病気と診断されます。レニンは、塩分摂取過剰により分泌抑制を受けるため、塩分過剰状態では通常アルドステロンは低値を示します。従って、この病気は、塩分を過剰に摂取しているにもかかわらず副腎からアルドステロンが過剰分泌されている状態と言い換えることもできます。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?
かつては高血圧患者に占める割合は1%程度と考えられていましたが、近年では、高血圧患者全体を対象としてスクリーニング検査を行うことが推奨されるようになったため、高血圧患者に占める割合は増加し、5%程度と考えられています。重症高血圧患者の中では、その割合はさらに上昇します。

この病気の原因は何ですか?
この病気には大きく分けて2つのタイプがあります。1つは、副腎腫瘍が原因となるタイプで、もう1つは過形成と呼ばれ、左右両側の副腎全体からアルドステロンが過剰分泌されるタイプです。

この病気ではどのような症状がおきますか?
アルドステロンの生理作用は、Naを体内に貯留することであり、そのためアルドステロン過剰状態では血圧上昇が必発です。ほとんどの症例は、健診などで高血圧を指摘されることがきっかけでこの病気の発見に至ります。またアルドステロン作用により、腎臓においてNa再吸収が亢進すると、代わりにK排泄が亢進するため、重症度の高い症例では、低K血症を呈します。低K血症の出現は必発ではなく、5割未満と言われていますが、塩分負荷や利尿薬使用に誘発されて低K症例を呈することもあり、また高血圧と比べても、この病気に特異性の高い症状なので、非常に重要な症状です。

この病気にはどのような治療法がありますか?
上述した2つのタイプによって、治療法が異なります。副腎腫瘍が原因となるタイプは、手術治療を行うことで、病気を根治することができます。一方、左右両側副腎(過形成)が原因となるタイプは、手術治療の対象とならず、アルドステロン拮抗薬による治療を行います。現在使用可能なアルドステロン拮抗薬は、スピロノラクトンとエプレレノンの2種類があります。前者は、男性に高用量で使用すると、女性化乳房の副作用が出やすくなります。これらの薬物治療は、受容体拮抗薬による治療であり、アルドステロンは低下しないため、根治治療とはなりません。

この病気はどのような経過をたどるのですか?
無治療のままだと脳卒中や虚血性心疾患など、高血圧関連の合併症のリスクが増大します。注目すべきは、上述のようなアルドステロン過剰に対する治療を行わずに一般の高血圧として治療した場合も、これらの合併症のリスクが上昇するという点であり、そのため、高血圧患者の中からこの病気を適切に診断・治療することが求められます。副腎腫瘍が原因となるタイプで、手術治療により治癒が得られた場合は、このようなリスクから解放されますので、無治療で経過観察となります。薬物治療の方針となった場合は、治療の継続が必要ですが、同様に合併症のリスクからは解放されます。


厚労省のサイトによると、「高血圧症」は収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上になる病気で、日本人のうち約4000万人(約3人に1人)が該当するとされていますので、高潔患者の5%を占めるとすると、日本人のうち約200万人が原発性アルドステロン症だということになります。この数字はにわかには信じがたいので、タイトルに「!?」を付けました。

私がみた患者さんは、左右両側の副腎全体からアルドステロンが過剰分泌される過形成タイプで、通常の高血圧治療では血圧が下がらなかったために、色々な検査をした結果、CTで副腎が大きいことからこの病気を疑われたそうです。現在は、アムロジピンとエプレレノン(セララ®)で正常血圧にコントロールされていました。女性化乳房にもなっていませんでした。

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