「低コストの再生医療」の先に見えるもの

iPS細胞使う低コストの心臓移植、年内実現へという記事は、「つい先日、他人由来のiPS細胞を使った網膜移植手術が話題になったばかりですが、同じように他人由来のiPS細胞を用いた心臓移植が年内、もしくは来年にも行われようとしています。」という内容で、「今後2年以内に5例の移植を行い、移植の安全性や効果を確認する予定だといいます。実際に今回の移植が成功すれば、移植までの時間が大幅に短縮でき、コストも5分の1に抑えられると見られています。」と書かれています

「同様に、他人由来のiPS細胞を使った臨床研究が年内にも始まるのでは、と期待されているのが心不全患者への心臓移植です。心不全患者の再生医療については、自分の足の筋肉の細胞(筋芽細胞)を培養してシート状にした「ハートシート」(テルモ)を移植する新しい治療法が始まったばかり。昨年(2016年)の8月に健康保険の適用になってから、大阪大学医学部の澤芳樹教授のもとで5件の移植がすでに行われています(2017年3月現在)。その一方で、次のステップといえるiPS細胞を使った「心筋シート」移植が実現化に向けて動き出しているのです。」とも書かれています。

現在使われているハートシートの価格は1治療で約1470万円でした(資料をみる)。また、患者1人に1億円かかっていた!?…再生医療のコスト、初の調査という記事によると、理化学研究所などが2014年に行ったiPS細胞による目の難病治療では、患者1人に約1億円かかったそうです。これらの価格から類推すると、「iPS細胞を使う低コストの心臓移植(正しくは心筋シート移植)」のコストはおそらく1000~2000万円だと思われます。

昨年の年末に、患者1人で年間約3500万円だったオプジーボ®というがん治療薬の価格が、今年の2月から50%引き下げられたというニュースがありました(ニュースをみる)。オプジーボ®だけではなく、ほぼ同じ時期に保険適用されたいくつかのC型肝炎の新しい治療薬も同レベルの高額な薬です。

今の高齢者に対する医療は、ヒトの一生の働けない部分を引き延ばす作業がほとんどですので、再生医療などの「高度先進医療」が進んで国民の寿命がどんどん延びていけば、一生働いて得られる収入は増えずに、老後の医療費や介護費だけが増えていくことになります。政府は当面、医療費を抑制してこの状況を乗り切ろうとしていますが、多くの中小病院の倒産や国民皆保険制度の崩壊を避けることは難しいと思います。

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