10月10日の記事の続きです。友人に感想を聞いたところ、興味深いコメントをいただきましたので、以下に抜粋を紹介します。
なんかしてやったり的な文章がいやで、おちついてちゃんと読む気になれなかったのですが、この人達は、open accessには審査もしない、ひどい雑誌が、しかも発展途上国中心にあるぞ、って言いたいのでしょうかね。
それがこの記事の主張だとすると、codaにあるみたいに、traditional, subscription-based journalsと比較して、統計処理して物言わないとだめですよね。これじゃ、この記事自体が、ちゃんとしたcontrol studyすらなく結論を導いているとんでも論文、ってことになりますね。これはこの記事自身がつりになってるんですよ、きっと。
open access journal はinternet の普及と共に現れたシステムであって、post publication peer review っていうのも、ほぼ同時に形成されてきてる考え方だと思うんですよ。つまり、極端にいえば、手軽に、無制限にonlineに載せてしまう。そして衆人の目にさらされることで、評価されていくという。
だから、初期からopen access journalには、readers’ comment やら ratingやらがついてるのがありますし。f1000みたいに、すでにでていることでもいいとか、negative resultsでもいいとか、そのへんもインターネット時代のスタイルから来ていると思うんですよ。オンラインストレージは、すでに無制限利用可の時代ですからね。
だからこの記事の著者が実際投稿した論文が、peer reviewでrejectされるかどうかが問題というよりも、むしろonline publishされてから、どれぐらいたたかれるか、たたかれなくても、無視されるかが大事だとおもうんですよね。
peer reviewがちゃんと行われているかをおとりそうさするべきは、まさに traditional, subscription-based journals の方だと思うんですけどね。
「この記事自身がつりになっている」という指摘は面白いです。この記事をとりあげて「open access journalはどうのこうの」という文章を書いたら笑いものということでしょうか?既に多くの人がScience誌の権威のためかつられています。
いずれにしても、最近の捏造論文の多くは、Science、Nature、Cellなどのtraditional, subscription-based journalsがターゲットになっているわけで、捏造を見逃した責任などを追及したりすれば、天に唾を吐いているようなものだと思います。
“predator”ではない出版社の場合、ウソのデータばかりの論文が投稿されるなどとは思っているはずはなく、アフリカの発展途上国で頑張って研究しているのだから、オンラインストレージは無限に近い余裕があるので、少しぐらいのデータの不備があっても掲載しましょうという結果になったところも多いと思います。
iPS細胞を臨床応用したと発表した森口氏のことを記事にした新聞社が、明らかにででっちあげの臨床試験だったのにウソが見抜けなかったと後から非難されていたのを思い出しました。非難されるべきは、新聞社ではなく研究者=投稿者です。自分達の既得権を侵すopen access journalのイメージダウンを狙った記事を書くために、多くの善意の出版社や編集者を巻き込んだこのSciece記事の著者の「オレオレ詐欺」的投稿行為も問題にされるべきだと思います。
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