福島第一原発事故 ヤマトシジミ奇形論文の琉球大学研究費カット
以下は、図を除く記事の全文です。
原発被害研究に圧力
福島第一原発事故を受け、放射性物質による生態系への影響を調査。現地で採取したヤマトシジミと呼ばれる蝶に「目がくぼむ」「羽が小さい」などの異常が出ている、とする論文を発表した琉球大学の研究室が研究費用をカットされた。
9月採取では半数が奇形
福島第一原発事故による被害は次世代にも及ぶのか? 御用学者の多くが「世代を超えた影響はない」とするが、人間より世代交代サイクルの短い生物を観察することで予想できる、とする専門家も多い。
琉球大学の大瀧丈二准教授が率いる研究チームでは、ヤマトシジミという小型の蝶を福島県で採取し、奇形などの発生率を調査した。
結果は衝撃的なもので、2011年5月に採取した蝶では12%に、9月に採取した蝶ではなんと28%とさらに2倍の高率で「目がくぼんでいる」「羽が小さい」などの異常が見られた。また異常のある蝶と正常な蝶を交配させた第三世代では、奇形率は34%にものぼった。世代を超えて影響しない、とする楽観論を真正面から否定する結果である。同論文は、世界的な権威とされる英科学誌「NATURE」にも発表された。
研究費カットで寄付金を
放射性物質により広範囲が汚染された地域での生態系に対する研究は、非常に価値の高いものである。にもかかわらず、大瀧准教授のヤマトシジミの研究は、研究費が打ち切られた。
大瀧准教授はこの研究を継続し、放射能汚染により生態系に負荷がかかっていることを実証するため、現在一般からの寄付を募っている。
研究費用の内訳を見ると、外部委託するゲノム解析費用が約700万円にのぼるなど、自腹では困難な状況がうかがえる。下記サイトから、寄付を行うことができる。
◆大瀧研究室
http://w3.u-ryukyu.ac.jp/bcphunit/kihu.html
大瀧氏らが発表した論文のタイトルは、”The biological impacts of the Fukushima nuclear accident on the pale grass blue butterfly”です(論文をみる、論文の日本語訳をみる)。記事では、世界的な権威とされる英科学誌「NATURE」に発表されたと書かれていますが、実際には「Nature」を出している出版社の「Scientific Reports」という新しい科学誌に発表されています。これは、大瀧氏の責任ではないと思います。
本論文は発表と同時にマスメディアにとりあげられ大きな話題になりました。一方、科学系ブログの多くは、以下の例のように論文内容を批判しました。
論文を批判するブログ記事では、生息北限の東北地方では以前からヤマトシジミの突然変異率が高いことが知られているので、観察された異常な突然変異率原を発事故による放射性物質の飛散のせいにするのは無理があるとか、南の県との比較は不適当で、より北の青森県と比較すべきである、などが指摘されました。
しかし、これらの問題については、「質問等について」というページでで的確に答えられています。捏造などのケースと異なり、論文の取り下げなどはされていません。また、個人的な感想ですが、論文もホームページも非常に良くできています。
上の記事には。「原発被害研究に圧力」、「琉球大学の研究室が研究費用をカットされた。」、「大瀧准教授のヤマトシジミの研究は、研究費が打ち切られた。」と書かれています。しかし、ホームページのどこにも「研究費用のカット」があったことは書かれていません。普通の研究室のホームページではめったに見られない「寄付のお願い」というページがあるだけです。そんなこと、あるのかなあ?
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