一般名処方のすゝめ

処方箋に記される薬の種類には、商品名と一般名の2種類があります。商品名(登録商標、銘柄名、ブランド名ともいう)は、製薬会社が独自に製造、販売する商品であることを示すためにつけられます。

例えば、血中コレステロール値を下げるために使われるHMGCoA還元酵素阻害薬、一般名プラバスタチンの商品名がメバロチンです。この場合、まだ「チン」が同じですが、肝臓移植などに用いられる免疫抑制薬、タクロリムスの商品名はプログラフで、何の共通性もありません。

ジェネリック医薬品というのをご存知でしょうか?新薬が発売されて20-25年経つと特許が切れ、他のメーカーも同じ成分、同じ効果のお薬を製造できるようになります。これが「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」です。

商品名は、上にも書いたように登録商標ですので、特許が切れても他社が使用することができません。そのためジェネリック医薬品には別の商品名をつける必要があります。メバロチンの場合、マイバスタン、プラバスタン、コレリットなど10以上の商品名があります。これらすべてを覚える事は無理ですので、今後ジェネリック医薬品の名称は、「一般名+剤形(錠剤、カプセル剤など)+含量+会社名」に統一されるらしい。

このような状況を反映し、一部の病院(宇多野病院の例をみる聖マリアンナ医大の例をみる)では、一般名で処方すること(「一般名処方」)で、ジェネリックにするか先発品にするかを患者さんが自分で選ぶことができるようになっています。

私は、経済的な理由からだけではなく、医療関係者や患者さんが薬物治療の内容をよく理解するためにも、一般名処方が望ましいと考えています。

国際的に通用しない商品名を覚える無駄。医薬品のメカニズムを考えずに、商品名と病気を短絡的に結びつける傾向。医薬品卒前教育と卒後教育の解離。ジェネリック医薬品普及の阻害。等々、商品名で処方することの問題点は明らかです。

関係ないかもしれませんが、政治献金と同様、特定の製薬会社から研究費が提供されて、その会社の医薬品を優先的に使用した場合、どんな言い訳をしても疑われます。一般名処方は、「コンプライアンスの遵守」にも直結しています。

コメント

  1. inoshishi より:

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    本当にこの意見,大賛成です。2年ぐらい前に水虫で内服剤をもらったときに,院内処方してもらったクスリの名前が珍しかったので,一般名を聞いたところ,警戒されたには驚きました。単に家で処方されたクスリの作用や副作用をまじめに調べようと思っただけなのに,ややこしい患者だと思われたみたい(本当にややこしい患者だと思うけど・・・・・)。ネットで商品名から一般名にたどりつくのは簡単だけど,まず一般名で患者には対応するべきだと思います。そこで質問があります。副交感神経遮断薬のミドリンの一般名はトロピカミドだけど,瞳孔散大(ミドリアーシス)を連想させるミドリンの方が,トロピカミドより一般名として覚えやすいし作用も連想させて名称としては適切な気がしますが,薬の一般名はどのようにして決めるのですか?それから私は頭痛のときはバフリンを愛用していますが,バファリンはアセチルサリチル酸と緩衝制酸剤(アルミウム化合物や炭酸マグネシウム)の二つからなっていると思いますが,こういう場合は,バファリンという薬に対して,二つの一般名を処方されるのですか?最後に,ついでの質問ですが,日本では,お医者様は平均して20ふらいしか薬を知らない(使えない)と聞いたことがあるのですが,本当でしょうか?

  2. tak より:

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    >inoshishiさん
    一般名は、その成分からWHOの規則にそって命名されるそうですが、その規則は知りません。バファリンの成分はアスピリンだと思います。小林化工製のジェネリック医薬品の場合は、『アスピリン錠100「KN」』という名前になっています。合剤の場合も、2種の成分を書くことになると思います。最後の質問ですが、神戸大学出身の医師は、医学部の薬理学の試験が厳しいので、最低でも50の薬物を知っていると思います。

  3. inoshishi より:

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    >takさん
    なるほど,合剤の場合は,複数の成分について処方するわけですね。ところでアスピリンが一般名ということですが,もともとはサリチル酸メチルが一般名で,合成に成功したバイエル社がアスピリンという商品名で販売したらしいです。しかし,第一次世界大戦後,戦勝国がアスピリンという商品名をドイツのバイエル社から剥奪して,これを一般名としたということです。つまりアスピリンは一般名で,バイエルアスピリンは商品名ということになりますね。調べていたら,恐ろしいことが書いてありました。小児用バファリンの成分はアスピリンではなくて,アセトアミノフェンであるという記載がありました。以前,心筋梗塞の予防のために小児用バファリンを飲むjとよいと聞いたが事がありますが,まったくアスピリンを含まない製剤ならば,無駄ですね。まったく異なる薬物を同じバファリンという名称で販売されていたと知って驚きました。やはり「一般名」が大事だと思います。

  4. tak より:

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    >inoshishiさん
    昔の「小児用バファリン」は、現在「アスピリン(低用量1)」になっていてジェネリック医薬品もありますが、名前が統一される以前ですので、いろいろな名前がついています。以下のサイトをご覧ください。 http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se33/se3399100.htmlを

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