ビスホスホネートの使用と大腿骨骨幹部の非定型骨折

Bisphosphonate Use and Atypical Fractures of the Femoral Shaft

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:ビスホスホネートの使用により大腿骨骨幹部の非定型骨折のリスクが増加する可能性に関して、これまでの研究結果は一致していない。

方法:2008年、スウェーデンでは、55歳以上の女性12,777例が大腿骨を骨折した。この中、大腿骨転子下骨折または大腿骨骨幹部骨折であった女性1,271例中1,234 例のX線写真を再検討したところ、非定型骨折59例を同定した。投薬と合併症に関するデータは国の登録記録から入手した。ビスホスホネートの使用に関連する非定型骨折の相対および絶対リスクを、全国コホート解析によって推定した。さらに、非定型骨折59例を通常の大腿骨転子下骨折あるいは大腿骨骨幹部骨折であったコントロール患者263例と比較した。

結果:ビスホスホネートの使用による非定型骨折の年齢補正相対リスクは47.3(使用のない患者のリスクを1として)だった。一方、絶対リスクの増加は、10,000患者・年あたり5例だった。リスクは、合併症や他の薬物の併用とは独立していた。

結論:これらの人口に基づく全国規模の解析は、ビスホスホネートの投与を受けている患者を安心させるものであろう。非定型骨折患者におけるビスホスホネートの使用頻度は高かったが、絶対リスクは小さかった。


ビスホスホネートが骨粗鬆症の患者に対して、骨折を減らすベネフィットをもたらすことは良く知られています。しかし一方、ビスホスホネート投与は骨のリモデリングを減らすために、微小骨折を蓄積させ、疲労骨折を引きおこすことも知られています。

ビスホスホネートによる疲労骨折は、近位大腿骨骨幹部の外側皮質のような高い張力ストレスがかかる緻密骨でおこるとされています。本研究は、このような非定型骨折とビスホスホネートの関係を調べたものです。

解析の結果、非定型骨折患者におけるビスホスホネート服用者の比率は非常に高いけれでも、ビスホスホネート服用者が非定型骨折をおこす絶対リスクは1年あたり2,000人中1人という非常に低い率であることがわかりました。また、このような疲労骨折はグルココルチコイドやプロトンポンプ阻害薬でも生じるといわれていましたが、本研究ではそのような結果は認められませんでした。また、ビスホスホネート製剤の種類による違いも認められませんでした。

本研究は、関連記事で紹介したカナダでの研究結果とほぼ一致しています。これらの結果から、骨粗鬆症を指摘された女性に対しては、食堂狭窄などの例外を除いてビスホスホネートの服用を勧めるべきだと思います。論文によればビスホスホネートの種類には関係なく効果があるようですので、アレンドロン酸のジェネリックなどであれば、経済的な負担も小さいと思われます。

関連記事
ビスホスホネート使用と高齢女性における大腿骨転子下および骨幹部骨折リスク
経口ビスホスホネート剤は静注剤と比べると顎骨壊死リスクは低い
ビスホスホネート(骨粗鬆症治療薬)の作用メカニズムについて

コメント

タイトルとURLをコピーしました