急性骨髄性白血病(AML)に関連する遺伝子変異がほぼすべて同定された

致死的な血液癌の背後にある主な遺伝子を特定
以下は、記事の抜粋です。


急性骨髄性白血病(AML)に関連する遺伝子変異がほぼすべて同定されたとの報告が、”The New England Journal of Medicine”オンライン版に5月1日掲載された。ワシントン大学医学部(セントルイス)ゲノム研究所のTimothy Ley氏らの研究。

この研究結果は、AML患者の治療改善、個々の患者の疾患重症度をより正確に予測する方法の改善につながる可能性がある。Ley氏は、「これでこの種の白血病に関する遺伝子の脚本が手に入った。すべてのルールがわかったわけではないが、主な役者はすべてわかった。この情報は、すぐに積極的な治療を必要とする患者や標準的な化学療法が奏効する患者の解明に取り組むのに役立つ可能性がある」という。

Ley氏らは、AML患者約200人の白血病細胞のDNAを分析し、健常細胞のDNAと比較した。これによって、癌細胞でのみ発生し、AMLの発症と進行に寄与する変異を特定できた。研究の結果、AML患者の癌細胞では変異した遺伝子が平均13個認められた。これは乳癌や肺癌などの固形腫瘍で通常みられるものよりはるかに少なかった。

Ley氏らは、今回の研究が多数のAML患者を対象に行われたことから、AMLに関連するほぼすべての主要な変異が明らかになったとしている。米国では今年、1万5,000人近くがAMLと診断され、1万人以上が同疾患で死亡すると思われる。


元論文のタイトルは、”Genomic and Epigenomic Landscapes of Adult De Novo Acute Myeloid Leukemia”です(論文をみる)。

AMLは、大人の急性白血病の3/4を占める血液がんです。この原因となる遺伝子変異がほとんど解明された意義は大きいと思います。本研究では、200例の患者中50例の全ゲノム配列(遺伝子増幅、欠損、融合などの構造変化もわかる)を決定し、150名のエクソン部分の配列を決定しました。また、mRNAアレーを用いた遺伝子発現、マイクロRNAの配列、DNAのメチル化なども調べました。その結果、上記のように比較的少ない遺伝子変異で発病することが明らかになりました。

上記のように平均変異数は13個で、FLT3NPM1KITCEBPATET2という5個の遺伝子に変異が繰り返して認められたそうです。これら以外のものも合せて合計23個の遺伝子に有意な変異が認められました。また、中等度の細胞遺伝学的所見を示すAML細胞において、FLT3NPM1DNMT3Aの変異が高頻度で同時に認められ、一つの疾患単位と考えられることなどが明らかになりました。

また、これまでも報告されていたPML-RARARUNX1-RUNX1T1MYH11-CBFBなどの遺伝子融合は18%の症例に認められました。これらの結果は、今後の治療に大きく役立つと思われます。現在でも、60歳未満の急性骨髄性白血病の場合、8割が完全寛解に入り、その35パーセント以上が治癒しています。本論文の結果が臨床に応用されるようになればこの数字はさらに改善するものと思われます。

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