インドのコロナ感染者で危険な真菌感染症「ムコール症」が急増、なぜ?

インドのコロナ感染者で危険な真菌感染症が急増、なぜ?
以下は、記事の抜粋です。


極めてまれな真菌感染症である「ムコール症」は、現在インドにおいて、回復期あるいは回復後まもない新型コロナウイルスの感染者の間で増加している。この感染症は、主に鼻から始まって目、脳へと広がり、患者を死に至らせる場合もある。

公衆衛生の専門家は、ムコール症が増えている原因は、新型コロナの患者の治療におけるステロイドの無軌道な使い方にあると指摘している。ステロイド剤には肺の炎症を抑える働きがあるが、使いすぎると場合によっては免疫力の低下や血糖値の上昇を招く。そのせいで一部の患者、とくに血糖がコントロールされていない糖尿病の患者は、こうした感染症にかかりやすくなる。

世界屈指の糖尿病大国であるインドでは現在、壊滅的なコロナの第二波との闘いが続いており、医師たちは、今後数週間のうちにムコール症患者はさらに増えると予想している。

新型コロナによって特に大きな被害を受けている西インドのマハーラーシュトラ州では、州の保健相が、ムコール症患者は2000人以上にのぼる可能性があると述べている。

ムコール症は、ムコール(ケカビ)目のさまざまな真菌(カビ)によって引き起こされる深在性および侵襲性の感染症だ。これらの真菌は、食品のカビをはじめ、どこにでもいるごく普通の真菌だ。空気や埃の中に浮遊しているこのカビの胞子を吸い込み、鼻腔や副鼻腔に留まると、そこから感染を引き起こす。

とはいえ、胞子にさらされたすべての人が感染するわけではない。正常な免疫系があれば、ほとんどの場合、症状は出ず、何も起こらない。つまり、ムコール症を発症するかどうかは、その人の健康状態による。たとえば、化学療法を受けている血液がん患者や骨髄移植患者など、免疫系が低下している人は、ムコール症にかかりやすくなる。

同様に、新型コロナウイルス感染症の患者は、ステロイドを大量かつ長期間にわたって処方されることで、免疫系が弱くなっている可能性がある。医師たちの間には、新型コロナの患者が重症であればあるほど、必要なステロイドの量も多くなるという誤解があるが、これは試験によって裏付けられたものではない。

ステロイドには血糖値を上げる作用があり、糖尿病の患者はとりわけ厳しい状況に追い込まれやすい。血糖値が上がり、血液の酸性度が上昇すれば、真菌が増えやすい環境が生み出される。

そうした患者においては、胞子が発芽して長いフィラメント状の「菌糸」になり、血流、副鼻腔、骨にまで入り込む。ムコール症の症状と感染の進行は人によって異なる。ズキズキとした頭痛、発熱、顔や鼻の痛み、黒っぽい鼻汁、視力の低下、歯痛、歯の緩み、上あごの腫れのほか、顔面麻痺が出ることもある。感染が脳に達すれば、患者が死亡する確率は50%を超える。

ムコール症の患者は、診断後少なくとも10日から数週間、アムホテリシンB注射などの抗真菌治療薬を処方される。しかし、そうした必須薬品は、腎障害などの甚大な副作用を引き起こす可能性がある。また、外科的な処置が必要になることも多い。重症度が低いケースでは、医師が鼻腔内に内視鏡を挿入して病変組織を取り除く。感染がさらに拡大している場合は、眼球やあごの骨を取り除かなければならないこともある。需要の急増は抗真菌薬の深刻な不足を招き、薬の闇市場が立ち上がりつつある。

ムコール症を未然に防ぐため、公衆衛生の専門家は病院に対し、衛生状態の維持を強く求めている。また医師に対しては、ステロイドを適切に処方し、すべての新型コロナウイルス感染症の患者において、回復後も含めて、病院や自宅で血糖値を定期的にモニタリングするよう助言を行っている。


新型コロナウイルス感染では「サイトカインストーム」など感染者の免疫系の暴走を抑えるためにデキサメサゾンなどのステロイドが使われます。その結果の高血糖と免疫系の抑制が、正常なヒトでは感染しないパンに良く生えるケカビなどのカビが感染して「ムコール症」を引き起こすという話です。

国際糖尿病連合によると、2017年のインドの糖尿病患者数は7290万人で、中国に次いで世界第2位。45年には1億3430万人となり、中国を抜くと予測されています。糖尿病患者の場合、記事にもあるように高血糖になりやすく免疫力も低下します。ブドウ糖はカビが最も好む栄養分ですので、治療が不十分な糖尿病患者にステロイドを投与した患者は、カビの格好の餌食となるのでしょう。

日本では、糖尿病のコントロールは良い患者が多いので、インドと同じ心配はなさそうですが、超高齢者では免疫はかなり落ちるので、新型コロナウイルスとしてステロイドを用いる場合には、カビによる感染症(真菌感染症)に注意する必要があると思います。

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