中国のH7N9型鳥インフルエンザ、死亡例の臨床像が明らかに――発症から1週間と非常に急速な経過、最後はARDSを呈し死亡
以下は、記事の抜粋です。
報告されたのは52歳無職女性例である。
* 3月27日(第1病日)
咽頭痛と発熱で発症。他の症状はみられず。服薬せず。
* 3月28日(第2病日)
救急受診。聴診にて呼吸音粗であったがラ音なし。検査所見は白血球5800、CRP26.8で抗生剤投与をして帰されている。
* 3月29日(第3病日)
胸部X線施行、右下肺野に斑状陰影。抗生剤の経静脈的投与が3日間行われている。咳や呼吸困難は認められず。
* 4月2日(第7病日)
咳、呼吸困難の症状が急速に悪化し、復旦大学病院救急部を受診。重度の低酸素(pH 7.54,PaCO2 4.33 kPa, PaO2 3.66 kPa, and saturation of oxygen 61.3%)。CTでは両側にびまん性陰影と胸水貯留を認めた。白血球3290(好中球92%リンパ球5.5%、血小板15万)、CPK上昇、PT延長、電解質異常。この時点においてARDSともなう重症インフルエンザを疑われ、気管内挿管・人工呼吸器開始。ステロイド投与(methylprednisolone 40 mg)投与。
* 4月3日(第8病日)
抗生剤・免疫グロブリン・ステロイド継続するも状態悪化しARDSで死亡。
* 4月4日咽頭スワブが中国CDCに送られ、鳥インフルエンザH7N9型ウイルスの感染が確定。他の合併なし。
* このケースでは鶏接触歴なく、感染経路不明。最も考えられるのは、環境から、あるいは食物を通しての感染であろうと考察。
* 濃厚接触者は、夫が38度の発熱があったものの陰性。
なお、これとは別に上海の87歳男性例、27歳男性例、35歳女性例をまとめたものがNEJMに投稿されている。
元論文のタイトルは、”A fatal case caused by novel H7N9 avian influenza A virus in China”です(論文をみる)。また、NEJMの論文のタイトルは、”Human Infection with a Novel Avian-Origin Influenza A (H7N9) Virus”です(論文をみる)。
NEJMの記事に寄せられたコメントの多くは、”Good job”とか”Congratulations indeed!”など、中国の研究グループの的確な対応と迅速な論文執筆を評価するものです。これらの論文は、現在H7N9型鳥インフルエンザと戦っている中国の医療・研究機関が世界のトップレベルにあることをはっきりと示しています。日本で新型(ブタ)インフルエンザが流行した時のドタバタ騒ぎを思い出してください。
これらの患者が、発症から1週間の非常に急速な経過でARDS(acute respiratory distress syndrome、呼吸窮迫症候群)を呈して死亡している点については、初期診断の難しさを考えれば、やむを得ないと思われます。新しいウイルスの性質にもよりますが、早めのタミフル投与などで対応可能であれば、10年前のSARSの流行時とは比較にならない良い決着が期待できると思います。
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