カタールW杯、その実態

カタールW杯、その実態に非難の声を上げよう
以下は、記事の抜粋です。


W杯は人類史上最も偉大なスポーツイベントの一つだ。ただ1つの問題は、今年の開催国がカタールだということだ。

カタールでは、ジャーナリストらが外国からの労働者の状況を調査したという理由で投獄されている。性的少数者は犯罪者として扱われる。女性が結婚や旅行、外国留学するには、ほとんどの場合男性の許可が必要だ。

加えてカタールの労働慣行は現代の奴隷制にたとえられてきた。報道によれば、W杯開催国に選ばれた2010年以降、カタールでは南アジア出身の出稼ぎ労働者が6500人死亡している。専門家はこれらの死者について、多くが大会のための建設工事に関連して亡くなった公算が大きいとしている。

6500人というのは最も少なく見積もった数字であり、実際の総数はほぼ間違いなくこれを上回る。なぜならこの中には、フィリピンやアフリカ諸国などカタールに労働者を送っている多くの国が含まれていないからだ。(カタールは自国にやってくる出稼ぎ労働者の死亡率について、その規模と人口構成を考えれば予想の範囲内だと主張している)

物議を醸した招致
カタールは、気温が極めて高く、夏の間にサッカーをするのは健康上のリスクとなりかねない。大規模なスポーツの国際大会を招致するのには最も不合理な土地柄だ。

それなら一体どういう経緯でカタールは選ばれたのか? 終わりのない一連の調査報道が主張するように、招致を勝ち取った手続きは不正だらけだった(カタールはこの疑惑を強く否定している)。

例えばフランスがカタールへの支持票を投じてから間もなく、カタールのスポーツ持株会社「カタール・スポーツ・インベストメント」がパリ・サンジェルマンFCを買収した。同時期、別のカタール企業は仏エネルギー・廃棄物処理大手ヴェオリアの株の一部を取得した。

カタールの政府系投資ファンドと関連するある企業は、欧州サッカー連盟の前会長ミシェル・プラティニ氏の息子を雇用した。縁故主義か? ひどいものだ。

そもそもなぜカタールは、W杯招致を望むのか?自国の人権侵害をなかったことにし、世界的な舞台で輝く機会を得られる。W杯を招致することで、カタールは隣国のアラブ首長国連邦(UAE)と同様、国際的なイメージを打ち出したいと考えている。企業にとって開かれた国だと伝え、観光客や世界政治に関係する人々を歓迎したいとの思惑がある。

イメージを厳重に管理
こうしたイメージを確実に引き起こすため、カタールは各国のテレビクルーに対し、当局の事前承認なしに撮影を許可しないと発表した。(カタール大会の最高委員会はツイッターで発表した声明で、撮影許可について、国際的な慣行に従ったものだとの見方を示している)

人々がカタールのことを考えるとき、同国の指導者らが思い浮かべてほしくないのは、出稼ぎ労働者が猛暑の中で死んでいく場面だ。そうした内容が語られることで、世界の関心がカタールでの非道な状況に向く。事態を注視する他の独裁政権に対する警告にもなる。

代表チームにも責任がある
すでに積極的な動きもみられる。デンマーク代表によるモノクロの「抗議のユニホーム」は、力強い意見表明であり、カタール政府を激怒させた。W杯欧州予選の初戦で、ドイツ代表とノルウェー代表は「HUMAN RIGHTS」の文字が書かれたシャツを着用した。また、オランダ代表のルイス・ファンハール監督は、国際サッカー連盟(FIFA)が説明したカタール開催の理論的根拠を「でたらめ」と一蹴した。お見事。こうした動きは、ほんの出発点でなくてはならない。

この点で、米国サッカー連盟は、問題自体への発言はほとんどない。世界で最も裕福な国として、主要な軍事基地をカタールに置く米国には、こうした価値観を擁護することが特段に義務付けられている。現政権の公約が湾岸諸国の専制君主に責任を課すと謳っているならなおさらだ。

英イングランドのフットボール協会も、反応が鈍い。欧州各国の協会がカタールに対し「単にTシャツを着る」以上の形で非難の声を上げると約束したにもかかわらず、虹の柄のアームバンドを着けることで手を打った。これでは、Tシャツ以下の対応にしかならない。

全ての代表チームは取り組みを強化しなくてはならないし、選手にも果たすべき重要な役割がある。全ての選手が声を上げなくてはならないというのではない。ただ声を上げる選手は支持されるべきだし、その内容は広く伝えられるべきだ。サッカルーズの愛称で知られるオーストラリア代表のように。彼らはカタールで苦しめられている労働者に向けた状況の改善と、あらゆる同性関係の非犯罪化を呼び掛けた。

スポーツの未来
結局のところ、これはW杯の話にとどまらない。民主主義と人権を信じる人々が独裁政権に対して、愛するスポーツの乗っ取りを許すのかどうかという問題だ。サウジアラビアはすでに、ゴルフやプロレスを通じ、スポーツによる自国のイメージの浄化を図っている。ロシアとバーレーンは、F1でそれを試みた。しかしもし我々が、世界的な舞台でカタールに抵抗するなら、次世代の専制君主らにより大きな懸念を抱かせることができるかもしれない。

我々の活動で、カタールのような国にW杯の開催権を与える傾向は薄れるかもしれない。それによって数年にわたるボイコットや抗議運動、ネガティブ報道にさらされると理解すれば、彼らも考えを改めるだろう。

権威主義的な国々がこうした大会を我が物にしたがるのは驚くに値しない。まさにその点にこそ、我々がそれを許してはならない理由がある。


カタールW杯については、以前の記事でも出稼ぎ労働者の死亡について紹介しましたが、その他にもいろいろと問題があることがわかりました。日本の大メディアは一部を除いてほとんど紹介していませんし、選手や監督からの発信もないようです。

開幕が迫るW杯だが、開催国のカタールに対しては人権侵害などを糾弾する声が出ている

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過酷な労働条件のために、カタールW杯スタジアムなど関連施設の建設現場で死亡したアジアからの出稼ぎ労働者は6000人以上だという報道があります。

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