マルハナバチは遊ぶのか?

セイヨウオオマルハナバチは遊びをする!昆虫では初発見!
以下は、記事の抜粋です。


今回の解説はセイヨウオオマルハナバチという昆虫も遊ぶという行動を取る、という研究結果。

そもそも “遊び” の定義とは?
食糧、仲間、避難場所など、明確ですぐに効果や結果が出る合理的な行動ではない。
食糧など何らかの報酬に結びつけられたものではない、自発的でやりがいのある行動である。
食糧探しや交尾などの普段の活動とは異なる行動である。
繰り返される行動だが、型にはまったものではない。
ストレス下にはない、リラックスした状態で行われる行動である。

ロンドン大学の研究チームは、セイヨウオオマルハナバチの行動に関する研究を行っており、過去の研究では、木でできたボールを転がし、決められたゴール地点まで転がすと花の蜜という報酬を貰える、という行動と報酬の関連付けに関する実験を行っていた。

実験外で、ただ普通にエサが置かれている巣箱の中で、セイヨウオオマルハナバチは、エサが何の障害や妨害もない状態で置かれており、エサとは全然違う方向にあるにも関わらず、近くにあるボールを転がすという行動を行ったことに注目した。これはセイヨウオオマルハナバチが “ボール遊びをしている” と言えるのか?それを確かめるための実験を行った。

セイヨウオオマルハナバチは餌とは無関係にボールを転がす
多くのハチがボールのあるエリアに侵入し、ボールに接触することが分かった。接触した際の身体の位置や時間から、これは偶然触れた以上の明確な行動であった。実験を繰り返し、ボールエリアに侵入することとエサを得られることが無関係であることがわかっているはずの状態でも、ボール転がしの行動がみられた。

また、各個体の初回では、ボールが固定されているエリアと自由に転がせるエリアとの間では、どちらを選ぶかや侵入する回数に特に差は見られなかった。ところが2回目以降となると、かなりの確率でボールを自由に転がせるエリアを選択することもわかった。

セイヨウオオマルハナバチはボールのあったエリアの色を覚えている!
段階1では、餌場までの進行ルート上に20分ごとに入れ替わる黄色い部屋と青い部屋を挟んだ。片方の部屋にはボールがあり、もう片方の部屋にはボールがない状態にした。ボールの有無に関わらず餌場にいける。その2日後、段階2では、色以外に違いのない両方の部屋を選べるようにした。

次の実験では、最初の実験とは異なる46匹のセイヨウオオマルハナバチを使い、今度は巣箱とエサの間にボールが配置されたエリアを挟む形で実験を行った。このようにしたのは、色とボールの関係性について予想外の因子を避けるためだ。

2日間このような部屋の色の切り替えとボールの有無について経験させた後、臭いなどを消すために洗浄・消毒したこれらの部屋を1ヶ所で繋ぎ、どちらも選択可能な分かれ道としたよ。どちらの部屋を選んだにせよ、その部屋にボールはない。純粋に色だけで部屋の選択をする必要がある。

そして実験の結果、黄色い部屋にボールがあったグループは黄色い部屋を、青い部屋にボールがあったグループは青色の部屋を選択する可能性が高かった。

つまりハチたちは、仕切りでは見えない先にあるボールを目指して部屋を選択したのだろうということがこの実験から分かる。

セイヨウオオマルハナバチの行動は遊びの定義に当てはまる!
1. 食糧、仲間、避難場所など、明確ですぐに効果や結果が出る合理的な行動ではない。
⇒セイヨウオオマルハナバチは1つの餌場を見つけるとそこにまっすぐ移動する傾向にあり、他の場所を探索することはめったにない。餌までの動線が明確にも関わらず、ボール置場に寄り道する合理的な理由はない。
2. 食糧など何らかの報酬に結びつけられたものではない、自発的でやりがいのある行動である。
⇒実験はボールが餌場までのルートを妨害するようには配置せず、また、ボールを転がしたら餌がもらえるわけでもない。そしてボールの好みは、固定されて動かないものより、自由に転がせるものの方が強いこと、過去にボールがあったエリアをわざわざ選んでいることから、報酬とは無関係に自発的にやりがいのある行動としてボール転がしをしていた可能性が高い。

3. 食糧探しや交尾などの普段の活動とは異なる行動である。
⇒餌の採集や交尾、あるいは防御反応など、一般的に観察されている行動をボールに試みる様子は観察されなかった。何らかの行動練習と見る場合、ボール転がしは回数を重ねるにつれて効率が良くなるはずだが、ボール転がしが “改善” されることはなかった。

4. 繰り返される行動だが、型にはまったものではない。
⇒ストレス反応によって観られる繰り返される行動は、型にはまっていることがしばしばある。セイヨウオオマルハナバチのボール転がしは、転がすという行動そのものは繰り返されるけど、その回数や距離、ルートなどは全く予測不可能であることから、ストレス反応で起こる行動とは思えない。

5. ストレス下にはない、リラックスした状態で行われる行動である。
⇒ハチたちは飢餓や無気力、あるいは脅威を感じた時に示す “ブーン” という羽音を発しなかったことが確認された。

これらの結果から、セイヨウオオマルハナバチのボール転がしは遊んでいる行動である、という可能性がとても高い。また面白いことに、年老いた個体よりも若い個体である方が、より多くの個体がボール転がしを行うことが分かった!またメスよりもオスの方がその傾向にあることもわかった。


元論文のタイトルは、”Do bumble bees play?(マルハナバチは遊ぶのか?)”です(論文をみる)。

これらの結果をみると、マルハナバチのボール転がしは「遊び」の定義にあてはまりそうに見えます。虫も遊ぶとは、驚きました。一方、ヒトの「遊び」とされるもののうち、この定義にすべて当てはまるものはどれくらいあるのでしょうか?ヒトは遊びを遊びでなくしてしまう動物かも。

コメント

タイトルとURLをコピーしました