以下は、論文要約の抜粋です。
男性が性行為の相手として女性を好むことは、社会における相互作用として非常に重要だが、このように哺乳動物が異性をより好むことの分子あるいは細胞レベルでの制御メカニズムはほとんど知られていない。
本研究では、マウスのオスがメスを選択する行動には脳内セロトニン(5-HT)が必要であることを報告する。野生型のオスは、マウンティング行動の相手としてオスよりもメスを好むが、脳内セロトニン神経を欠いたオスは、嗅覚やフェロモンの知覚には障害がないにもかかわらず、性的嗜好性を失う。
このような脳内セロトニン欠乏の表現型は、脳内セロトニン合成に必要なトリプトファン水酸化酵素2(Tph2)の欠損によって認められる。このようなTph2欠損マウスに、Tph2がなくても体内でセロトニンに変換される5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)という薬物を投与すると、オスよりもメスを好むようになった。これらの結果は、脳内のセロトニンとセロトニン神経が哺乳動物の性的嗜好性を制御していることを示す。
これまでも、シナプスでのセロトニン濃度を上昇させるSSRIなどの薬物を服用すると、性衝動(リビドー)が低下することから、性衝動がセロトニンと関係することはある程度予想されていました。
この研究は、マウスの遺伝子操作と薬理学的実験を組み合わせることで、脳内セロトニンと性衝動が密接に関係することを綺麗に証明しています。
具体的には、脳内セロトニン欠損マウスは、その時間の80%をオスメスを選ばないマウンティング行動に費やすそうです。一方、野生型マウスのマウンティング行動は、メス相手の場合は時間の60-80%、オス相手の場合は20-30%で、メスをより好むそうです。また、オス相手の時でもセロトニン欠損マウスは、「ラブソング」的な鳴き声を発するそうです。
問題は、脳内セロトニンが減少すると、論文の主張のようにバイセクシャルになるのか、単純に性衝動が高まってメスとオスの区別なく欲情するのかの区別が難しいことです。ヒトの場合、ホモセクシャルな男性がSSRIを服用しても女性に対するヘテロにはならないそうですので、マウスとヒトとはかなり違うかもしれません。いずれにしても、中国の生命科学レベルが高いことを感じさせる論文です。
「良いムード?」の2匹(CBS newsより)
コメント