メスに男性器?そこから出産!? ブチハイエナのリスクしかない進化
以下は、記事の抜粋です。
ブチハイエナのメスの産道のイメージ
「ブチハイエナって、メスにも男性器(偽だけど)があって、驚くことに、出産はその男性器から子供が生まれ出てくるらしい」。3月下旬、こんなツイートが話題となりました。
この男性器のようなものは、実は、オスの男性器(陰茎)に相当する陰核が変化したものです。「擬陰茎」と呼ばれています。尿道も通っていて、長さは平均で17センチほどです。
そして、擬陰茎は産道を兼ねており、赤ちゃんはこの細い擬陰茎を通って生まれてきます。赤ちゃんは1.5キロほどの大きさです。出産時には擬陰茎の太さが2倍ほどになるとはいえ、あまりに産道が細すぎます。赤ちゃんが産道を抜けて出てくる時には、擬陰茎は裂けてしまうそうです。母親の20%は、初産の傷が原因で死に至ります。
また、産道が長いのも特徴です。擬陰茎を通るため、赤ちゃんは、胎盤を引きずって出てくるか、へその緒が切れた状態で生まれてきます。へその緒が切れると、赤ちゃんは無酸素状態となるので、死産のリスクが高まります。また、イラストを見ればわかるように、産道が途中で大きく曲がっているため、赤ちゃんが圧迫されて死ぬこともあります。これらが原因で、実に初産の60%が死産になるそうです。
なぜブチハイエナのメスには、これほど立派な擬陰茎があるのでしょうか。これには、ブチハイエナの社会構造が関係しているという説があります。ブチハイエナは完全なメス優位社会で、群れ同士の戦いや狩りもメスがおこないます。そのため、攻撃性を誘発する男性ホルモンが多く出て、メスの生殖器の外見もオス化してしまった、という説明です。同じくメス優位社会を形成するワオキツネザルも擬陰茎を持っています。
交尾のときは、メスが擬陰茎をお腹に引っ込めて、一時的な膣を作ります。ほとんどの動物の交尾は、メスに主導権があります(たぶん、この「メス」は「オス」の誤り)。しかし、ブチハイエナの場合には、物理的に擬陰茎を引っ込めないと交尾ができず、「完全に」メスに交尾の主導権が与えられています。
下のかわいい2匹は埼玉県の大宮公園小動物園で2007年に生まれた双子のブチハイエナです。母親も生きていてラッキーな出産だったようです。
進化とか性とかについて考えさせられる話です。霊長類のワオキツネザルもメスが優位で、同じような偽陰茎を持っているというのがおもしろいと思いました。
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