以下は、記事の抜粋です。
感染性胃腸炎が大流行の兆し
感染性胃腸炎の報告数が10月中旬から増加が続いており、第44週(10月29日~11月4日)の定点当たり報告数(5.58)が、2000年以降で2006年に次ぐ高い値となっていることが、国立感染症研究所感染症発生動向調査で明らかになった。
感染性胃腸炎の患者発生は、例年、10月から11月にかけて流行が始まり、12月中旬頃にピークとなる傾向がある。大半はノロウイルスやロタウイルスのウイルス感染を原因とするものであると推測されている。
ノロウイルスの感染経路としては、以前は食中毒としての経口感染がよく知られていたが、最近では、感染後の発症者や無症状病原体保有者との接触感染、さらに患者の嘔吐物や下痢便を介した飛沫感染などの、ヒト-ヒト感染が問題になっている。そのため、感染予防には、流水・石けんによる手洗いの励行と吐物や下痢便の適切な処理が重要だ。
感染性胃腸炎が大流行の兆し
感染予防には手洗いの励行と吐物や下痢便の適切な処理ということですが、感染してしまったらどうしたらよいかを少し調べてみました。
感染性腸炎は一般的に自然治癒傾向の強い疾患です。従って、ウイルス感染の場合はもちろん、最近感染の場合も対症療法を優先します。
ノロウイルスの場合、潜伏期間は1~2日で、主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛で、発熱は軽度です。通常は、これら症状が1~2日続いた後、自然に治癒します(厚労省のサイトをみる)。従って、以下のような急性期の脱水治療が最も重要です。
①輸液
下痢と発熱、それに伴う脱水の補正が最重要。脱水の程度に応じ経口(OS-1など、自作も可)または静脈内輸液を行います。過度の脱水になると、循環血液量が少なくなり、腎臓への循環も低下します。これが進むと、急激な高窒素血症(血清尿素窒素値や血清クレアチニン値の上昇)を伴う(腎前性)腎不全になってしまいます。この場合は、補液を中心とした入院加療の必要があります。
②食事療法
制限を最小限にとどめ、胃腸症状があっても、水分が多く消化の良い食事をとり、脱水の改善を図ります。
③対症薬物療法
感染菌の滞留や増殖を防ぐため、感染性下痢症には、強力な下痢止めは原則として使用しません。同様に、蠕動運動を抑制するブスコパン(ブチルスコポラミン臭化物)などの鎮静剤の使用も避けます。また、解熱薬は脱水を悪化させる危険があります。このため、多くの場合は、腸内細菌叢回復のために、ビオフェルミンなどの整腸剤、乳酸菌製剤のみで経過観察することになります。
上記を踏まえた上で抗菌薬の選択となります。ウイルス感染では抗生物質(抗菌薬)は用いず、上述の対症療法のみになります。
抗菌薬の投与が必要な場合は、(1)症状が重篤な場合、(2)乳幼児や高齢者などの免疫力が低下している場合、(3)二次感染のリスクの高い細菌感染(細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス、コレラなど)といった場合に限られます。
抗生物質としては、ニューキノロンかホスホマイシンの3日間投与を行います。カンピロバクターはニューキノロン耐性のため、マクロライド系薬剤を第一選択とします。腸管出血性大腸菌腸炎では、抗生物質を投与すると毒素が放出されかえって悪化することがあるため、議論のあるところです。
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