マンモグラフィ導入から30年,米国で年間5万人以上が過剰診断か
以下は、記事の抜粋です。
マンモグラフィの普及により,以前には診断が困難であった非浸潤性乳管がんも多く発見できるようになり,乳がんによる死亡率低下に大きく貢献しているはず―。
しかし,オレゴン健康科学大学のArchie Bleyer氏らは「1976~2008年の米国のデータを検討した結果,早期がんの診断件数は予想通りマンモグラフィの普及により倍増していたが,進行がん診断件数の減少はわずかにとどまっており,マンモグラフィによる過剰診断の懸念を払拭することができない」と11月22日発行のN Eng J Medで指摘した。過剰診断されていた米国人女性は年間5万人以上と推計されるという。
元論文のタイトルは、”Effect of Three Decades of Screening Mammography on Breast-Cancer Incidence”です(論文をみる)。
米国においては、マンモグラフィ検診の導入によって、毎年発見される早期乳がん(非浸潤性乳管がん、限局がん)の症例数が10万人あたり112例から234例へと約2倍に増加しました。しかし、後期乳がん(局所がん、遠隔転移)で受診する率は、10万人あたり102例から94例へと8%の減少に留まった、という調査結果の紹介です。
これを解析すると、検診によって追加的に早期がんと診断された122例のうち8例だけが進行がんに進展し、検診のメリットがあったと考えられますが、残りの114例は臨床的には問題のなかった腫瘍ががんとして発見された過剰診断ではなかったか、ということになります。このような過剰診断を受けたと考えられる人は、この30年間で130万人、新しく乳がんと診断された患者のほぼ1/3に相当するそうです。
関連記事でも紹介しましたが、乳がん治療の良好な予後を考えれば、多くの乳がん患者は初めから生命の危機になどさらされておらず、ピンクリボン運動などの乳がんの早期発見キャンペーンは、乳がんによる死亡の減少にはほとんど貢献していません。乳がんの「早期発見神話」を見直すべき時だと思います。
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