リリーが開発中の肥満治療薬「チルゼパチド」、体重20%の減量に効果-後期臨床試験

リリーが開発中の肥満治療薬、体重20%の減量に効果-後期臨床試験
以下は、記事の抜粋です。


イーライリリーが開発している肥満治療薬「チルゼパチド」の後期臨床試験で、最高用量を投与された患者が体重を約21%(約23キログラム)減らすのに有効だったことが示されたと、同社が4月28日に明らかにした。低用量の投与では平均で体重の約15%(約16キロ)を減らす効果があったという。

リリーの幹部らは今回の最新結果でチルゼパチド承認に向けた前進が加速し得るとし、今後の道筋を米食品医薬品局(FDA)と協議する計画だと明らかにした。


「インクレチン」とは、摂食によって上昇した血糖値に応じて、小腸などの消化管から分泌されるホルモンの総称で、すい臓からのインスリン分泌を促進する働きをします。インクレチンには、小腸上部から分泌されるGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)と、小腸下部から分泌されるGLP-1(glucagon-like peptide-1)の2つがあることが知られています。

GLP-1は、インスリン分泌を促進するとともに血糖値を上げる作用のある「グルカゴン」の分泌を抑制することで、食後血糖の上昇を抑える働きをします。また、腸への食べ物の排出を抑制する作用や、脳に働きかけて食欲を減退する作用もあります。

GIPはインスリンを分泌するのみならず,グルカゴン分泌も高めることが知られていました。しかし,近年,GIPは血糖値上昇時のインスリン分泌をタイミングよく刺激するとともに,分泌されたインスリンがグルカゴン分泌を抑制する方向で働くこともわかりました。

このように、これらのインクレチンには多様な血糖降下作用がありますが、分泌されるとすぐに「DPP-4」という酵素によって分解されてしまいます。「DPP-4阻害薬」はインクレチンの作用を強めることにより、また「GLP-1受容体作動薬」は、その構造に手を加え、DPP-4による分解を受けにくくして作用を持続させることにより糖尿病治療薬として使用されています。

チルゼパチド(tirzepatide)は、2型糖尿病治療のために開発されている新しいクラスの治療薬で、GIPとGLP-1の作用を単一分子に統合した新規の週1回投与デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬です。

メトホルミン単剤投与下の2型糖尿病患者において,ベースラインから40週後までのHbA1cの平均変化に関して,チルゼパチド週1回皮下注射の,GLP-1受容体作動薬セマグルチド(semaglutide)に対する非劣性および優越性が示されました(論文をみる)ので、GLP-1受容体作動薬よりも強力な糖尿病治療効果が期待できるかもしれません。

一方、実臨床において,DPP-4 阻害薬では体重は不変であることが多いですが、GLP-1受容体作動薬では血糖低下作用以外に体重減少効果も認める事が多く、自由診療での「GLP-1ダイエット」が日本でも広まっています。このような状況に対して、日本医師会副会長の今村聡氏は3月2日の定例記者会見で、インターネットで「GLP-1ダイエット」と広告し、自由診療のオンライン診療で2型糖尿病治療に用いるGLP-1 受容体作動薬をダイエット目的で使用されている現状を問題視し、「医の倫理に反する。医師が医療機関の名の下に、このような状態に関与していることは同じ医師として大変遺憾に感じている」と厚生労働省に対応を要求したそうです(記事をみる)。

このような状況は、厚労省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が今年1月に改訂され、初診からのオンライン診療が可能になったこととペプチドであるセマグルチドがサルカプロザートナトリウム(SNAC)と呼ばれる吸収促進剤を添加することで、SNACとセマグルチドの複合体が、ペプシンにより分解されにくくなり胃からの吸収が促進され、経口で十分な効果を発揮できるようになったことで可能になったと考えられます。

経口摂取可能なチルゼパチド製剤は出てくるのでしょうか?

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