大塚が開発した新規抗結核薬デラマニド(delamanid)は、多剤耐性肺結核に対して有効

Delamanid for Multidrug-Resistant Pulmonary Tuberculosis

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:デラマニド(delamanid)(OPC-67683)は、ミコール酸合成を阻害する新しい抗結核薬で、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の薬剤耐性株に対してin vitroとin vivoの両方で強力な活性を示す。

方法:本ランダム化プラセボ対照臨床試験において、HIV陰性の多剤耐性肺結核患者481例を、WHOのガイドラインに沿った標準薬物レジメンを基礎薬として併用した上で、デラマニド100mgを1日2回投与する群(161例)と200mgを1日2回投与する群(160例)、プラセボ群(160例)に割り付け、2ヶ月間投与した。喀痰培養の評価を週1回行い、喀痰培養陰性化を調べた。主要有効性エンドポイントは、2ヶ月後に喀痰培養が陰性化した患者の割合とした。

結果:標準薬物レジメン+デラマニド100mg 1日2回群では、喀痰培養が陰性化した割合は 45.4%であったのに対し、標準薬物レジメン+プラセボ群では29.6%であった。標準薬物レジメン+デラマニド200mg 1日2回群の喀痰培養が陰性化率は41.9%だった。ほとんどの有害事象は軽度~中等度であり、全群で均等に分布していた。

結論:デラマニドは、多剤耐性結核患者における2ヶ月後の喀痰培養陰性化の増加と関連していた。この結果は、デラマニドが多剤耐性結核の治療選択肢を広げる可能性を示唆する。


結核は、空気感染し感染力が強く、全世界の人口の約1/3が結核菌に感染していると推計されています。WHOによると、約880万人が結核を発症し、結核で死亡する人は140万人で、感染症での死因ではHIVに次ぐ2位です。また、多剤耐性結核や超多剤耐性結核の感染は急速に拡大しており、世界で毎年約44万人が新たに感染、特に東欧と中央アジアは感染率が高いそうです。さらに、通常の結核の死亡率は約7%ですが、多剤耐性結核の場合は約50%に達するという記事もあります(記事をみる)。

中国で行われた調査によると、現在100万人いる結核患者の中で少なくとも11万人は多剤耐性結核に感染しているそうです。「中国の多剤耐性結核患者は世界同患者総数の4分の一を占めている」、「活動性結核患者が500万人以上、保菌者全体では5億人(総人口の45%)いる」という報告もあります(記事をみる)。

このように、多剤耐性結核に有効な新薬開発は非常に重要な課題です。しかし、1963年以来、結核の新しい治療薬は発売されていません。本論文で紹介された40年ぶりの有望な新しい抗結核薬デラマニド(delamanid)は、大塚の開発です。幸運にも新薬として発売された場合は、治療上の必要性と耐性菌の出現防止のバランスをとりながら慎重に使用することが重要だと思います。

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コメント

  1. taniyan より:

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    tak先生
    お早う御座います、大塚は医薬品業界では決して大きいとは言えず、でもこれが販売となれば業績に大いに貢献できそう、応援したいです。
    それでは本日も研究、講義と、大変お疲れ様です。
                taniyan

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